MIZUMA ART GALLERY


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EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2005/07/13 - 2005/08/13
岡田裕子展 「主婦の趣味」

  • "Singin’n in the pain"
  • 2005
  • digital video
  • 7min.
岡田は、恋愛、結婚、出産、子育て等全て自身の実体験からネタをつかみベースにしていることにより、全てフィクションでありながらもひやっとしたリアリティを感じさせる、極めて優れた作品を作り続けることによって多くの人々に支持されてきました。前作「俺の産んだ子」は、自身の出産をベースにしつつ男性が単性生殖するという映像作品であり、現在もロングランで世界をまわるほどの反響となりました。
また岡田作品の重要なテーマとモチーフになってきたのは、他者とのコミュニケーションがとれない、当時はとれていたのに今はもうとれない、すれちがいばかり…、
そういった様々な喪失感を抱える「ちょっと心がこわれた(こわれかけた)人たち」です。そのくせそういった人々には「人は生きている限り何かを失い続ける。そして基本的には一人ぽっちだ。だけどそれでもしぶとく生きたるで」とでも言いたげな、自分でこわれた部分をちゃかすようなちょっとしたたくましさがあります。

本展で岡田が提示するのもその「ちょっとこわれてしまった(もしくは現在形の)」 女性です。

本展で岡田は、ある「平凡な」一主婦に突然(もしくは静かに)訪れた狂気とその結末までの数時間を描いた映像作品「Singin’n in the pain」を中心としたインスタ レーションを展開します。
──団地暮らしの主婦が子供を寝かしつけた後突如外へ踊りだし街中で踊りまくり踊り狂い、最後は自宅で自殺する──。しかし作品中には主婦の不満や苦しみなどがどこにも映しだされず自殺の原因もわからないままジ・エンド。 これは「なぜこの(不自由に見えない暮らしの)主婦が自殺するのか?」という謎をワイドショーのレポーターが追っていくという仕立ての、ショッキングなのに、テレビの向こうのどこか他人ごとの世界を描いた映像作品です。

この作品は今年始め東京都現代美術館で開催された「MOTアニュアル2005 愛と孤独、そして笑い」に出品し話題となりました。今回はこの「Singin' in the Pain」を中心としながら「MOTアニュアル」とはまったく異なった展示を試みます。 
岡田は今回会場を、「主婦」の舞台として作り上げ、主婦の日常、自分と自分の家族の歴史を見つめてきた生活の記録を舞台上に引き上げます。会場にはテレビに写った ワイドショーのような「singin' in the pain」の映像、そのまわりをとりかこむように「主婦」が作ったと思われる趣味的アートや小説といった隠れアイテムが並びます。それは自殺した「主婦」が生前作ったものたちなのか、それとも茶の間でワイドショーを眺めている「主婦」が作り上げたのものなのか──。また、そもそもこの展覧会に登場する「主婦」は岡田自身のことなのかそうでないのか、重層的な謎を観客 にかけていきます。

岡田映像作品の特徴といえば、どれも単に視覚的経験としての美術ではなく、伝えるべき内容が前提にある美術作品=映像作品ということを強く意識して作っていることです。
映像作品が、表現の実験の場として成立した時代は終わり、視覚体験を伴う時間芸術としての提示方法も最近は食傷気味の傾向にあります。そういった中で、本来の映像作品が伝えうるもっとも有効なコンテンツとしての物語性を本作は見事に包含しているといえるでしょう。
この「Singin’ in the pain」こそは、0分0秒から通してみるべき価値のある映像作品であり、途中から途中までわかった気になる作品に対してのアンチテーゼでもある
のです。

都会の「一核家族」の「ある一専業主婦」の生活にまとわりつく家族・世間・時代とその中の様々な人間関係。周りからは想像しにくい、彼女たち自身が考える世間の常識という半ば思い込みの規制枠の中で生まれる孤独感や葛藤や狂気。
映像という、最も刺激性の強いメディアに長時間ふれているであろう主婦層は、社会に埋もれ揉まれたりしている男性の社会との関わりよりある部分で深く社会にふれていると言えるでしょう。現代の凄惨な事件や戦争にもメディアを通して受け続けていくうちにだんだん惨劇が日常の一部になったような、人の感受性さえもメディアに支配されているような、それを他のどんな職についている人よりも多く見ることが可能な「主婦」という立場の女性が、ある時逆にメディアに登場してしまうはめになってしまうかもしれない…その恐怖にも近い感覚を、映像の中のワイドーショーのレポーターさえも見つけられなかった自殺の謎を、是非会場で解き明かしてみてください。

自身も主婦をこなしつつ家族や社会と接し、制作を続ける岡田ならではの視点で「主婦」のとして生きることの表向きの顔と無意識の闇の部分を見事にとらえた本展を是非ご覧いただきたいと思います。

──ある「平凡な」一主婦が踊り狂ったあげくに自殺する…「あるわきゃねーだろ!そんなこと!!!」でも、それはわからないのです。ある時現実はドラマを軽く飛び越えたりするのです。岡田の提示するのは「未来図」なのです。



岡田裕子Opening
打ち上げイベント

「主婦の悪シュミNIGHT 
at Mizuma Art Gallery Action」

7/13(水)20―22時
会費2000円
ミヅマアートギャラリー5F
(新スペース)

今宵限りのメンバーによる
コラボレーションパフォーマンス

☆岡田裕子映像作品「Singin’ in the Pain」キャスト・スタッフによる夢の共演!

岡田裕子(Artist)

ダーティー工藤
(映画監督、評論家、緊縛師)

with DJ:コンプレックス
(林靖高・卯城竜太)

夏らしいお食事と主婦的DJパーティーをお楽しみ下さい。