MIZUMA ART GALLERY


トップ › 展覧会・イベント ›  倉重迅展 「OLD HOLBORN」

EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2005/08/24 - 2005/09/10
倉重迅展 「OLD HOLBORN」


  • installation view at Mizuma Art Gallery
  • 「Das Kunstwerk im Zeitalter Seiner Technischen Reproduzierbarkeit」Still image from video installation
  • 2003
この度、ミヅマアートギャラリーにおきまして、日本で初の個展となる倉重迅の展覧会を開催することとなりました。

1975年日本に生まれ、現在はフランスを中心にアート活動おこなう倉重は、ビデオやインスタレーションを中心にさまざまな作品を制作しています。今回はその中から写真と手紙による「僕らの愛で残ったもの」シリーズと、「Das Kunstwerk im Zeitalter Seiner Technischen Reproduzierbarkeit」等2点のビデオ作品を展示します。

「僕らの愛で残ったもの」シリーズは、倉重が実家で、以前自分宛に届いたラブレターを偶然見つけ出したことからヒントを得ました。意外にも人の秘密を覗いているようで面白い、と。この作品は12時間あるいは24時間という決められた時間のなかで、倉重自身が様々な人と疑似恋愛をするもので、本物の恋人のように時を過ごし、相手にその出会いと過ごした時間をラブレターとして綴ってもらい、一緒に写真を撮ります。そしてそれら壁3面に渡るインスタレーションの写真とラブレターを、 一挙に公開するというインスタレーションです。仲良く寄り添う写真やラブレターは、まるで本物の恋人同士のようで、それらは真実を語っているように見えます。しかしこの幸せいっぱいの仮想現実を突きつけられた観客は、一体真の愛とは何かを改めて考え直すことになるでしょう。

また、映像作品「Das Kunstwerk im Zeitalter Seiner Technischen Reproduzierbarkeit (複製技術時代の芸術)」は、ウォルターベンヤミンの論文から引用した言葉です。倉重はこの文書に述べられている複製とアウラの消失というテーマに触発され制作を始めました。1つの場面を2つの異なるアングルから撮影し、主体は同じでも異なる2つの映像を同時に突きつけます。1台は静止画を撮影し編集するというぱらぱら漫画風の映像が展開され、もう1台にはそれらの撮影風景全体が映し出されています。このように同時に出来上がった2点の作品は、観客に映像における方法や時間の概念を再考察させることでしょう。

身の回りに溢れるあらゆる情報を独自のアンテナで捉え「その瞬間の自分の興味に忠実に作り上げる」倉重の作品群は、上記のように写真や手紙、映像といった様々な表現方法により、一見統一性のないものに見えます。しかしそれらの作品は、一貫してリアルとヴァーチャルの境界線を問うものであり、常に私たちに新鮮な衝撃を与えてくれます。ヴァーチャルなものが溢れすぎている日常にいかに慣れてきってしまっているかを、はっと気づかせてくれるのです。倉重は、そのことをユーモアたっぷりに作品に内蔵させています。混沌とする社会、私たちの日常、その中に果たして真実はあるのでしょうか。

面白いことを探してなんとなくヨーロッパに渡り、ふらりと芸術の世界に入り込んだという倉重ならではの、その独自の世界観を存分にお楽しみいただけることと思います。

  • installation view at Mizuma Art Gallery