MIZUMA ART GALLERY


トップ › 展覧会・イベント › 宇治野宗輝「日本シリーズ」

EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2002/07/10 - 2002/08/10
宇治野宗輝「日本シリーズ」

宇治野は自ら考案、製作した楽器のシリーズ「LOVE ARM」を用いた演奏並びに展覧活動を中心に活動することで知られますが、今展で展開する作品群はそういった彼の今までの活動とは少々趣が異なります。今回宇治野が展開する新作「日本シリーズ」は、'96年から'97年まで約一年間雑誌「コミッカーズ」で連載していた「擬音フォント化計画」(1)を発展させた、漫画の擬音のような文字で和製英語を描くカタカナ絵文字のシリーズ作品です。

ラヴ・アームも含め、宇治野作品における視覚的な要素には、「日本で出会う欧米のイメージ」が重要な主題となっています。日常生活に根ざした主題で作品を制作しようとしたときに宇治野は、日本に戦後輸入された欧米の文化や意匠が様々な場所・形
で存在していることに注目しました。それらは、純粋な形を保っている物から、日本の土着的な環境や精神と結びついて奇妙な形になっているものまで様々な状態で、幅広く、深く現在の日本に根付いています。今回の「日本シリーズ」で彼が展開しようとしていることは、その後者、つまり、外来語及び和製英語がどれほど、奇妙で興味深い形で現在の日本に定着しているかをあらわにする試みです。日本独自の文字カタカナは、「擬音を文字で表現するため」と「外来語を書く」という目的で使用されることがほとんどですが、『カタカナがあることによって、日本人は英語が話せなくなっているのではないか』という宇治野の少々強引な仮説がこのシリーズの核となっています。

今回彼が表現しようと試みるこのシリーズの中心となるのは、野球に関する単語です。日本で使われる野球の用語にアメリカの野球では使われない英語表現が多く見られることに宇治野は注目し、本展新作を総称して「日本シリーズ」と名付けました。例え
ば「ゴロ」「ゲッツー」「ナイター」「バックホーム」などは、私たち日本人には普段から割と聞き覚えのある単語たちです。それらの語を、ヒップホップに代表される黒人文化のストリートにおける世界的な流行や、李朝の民画などを視野にいれ、漫画の擬音の表現をベースにした様々な形式でビジュアル化します。他にも、英語が日本でアレンジされそのまま日本に定着した単語やいわゆる和製英語(例:「Yシャツ」「Gパン」「ビーチパラソル」「ラブホテル」など)や、良識ある英語のネイティブスピーカーではなかなか口に出して読めない単語(例:「ファック」「シット」「ビッチ」など)がカラフルなカタカナ絵文字として展開します。

これまで、ゴージャラスなどの宇治野のラヴ・アームによるライブ活動などしか知らない人には、今展の作品は珍しいものにうつるかもしれません。が、本展でリアルな日本の美を追求するこのアーティストの新しい可能性を感じていただけることでしょう。
(1)「擬音フォント化計画」
'96年12月から'97年10月号まで雑誌「コミッカーズ」(美術出版社)で連載した、主に'70年代の漫画に登場する描き文字をサンプリングしてフォント化したシリーズ。