MIZUMA ART GALLERY


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EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2002/10/09 - 2002/11/09
もとみやかをる展「修復と再生」

もとみやは身体や食生活などに着目した作品を制作し、観る者に視覚だけではなく触 覚や臭覚までをも意識させる作品を制作することで知られています。

 今回もとみやは「修復と再生」をテーマにした新作を発表します。2000年にもとみやが滞在したネッドランドアートセンター(サンフランシスコ)のスタジオは、幾重にも塗り重ねられた壁がはがれ、模様を描いていました。彼女はその壁に障子紙をあ
ててひび割れをトレースし、縫い閉じるドローイングを制作しました。また、2001年(テロ事件前)に滞在したニューヨークの貿易ビル近くにあったスタジオ(ISCP)では、床の傷に手当を施しドキュメントしました(*1)。生物だけでなく、街や建物も年をとり修復や改装を繰り返しながら再生を続けることに着想したこのプロジェクトを、今回は自然環境や絶滅動物種へ展開します。特殊な動物相で知られ、日本が消費する木材資源の主要な産出地でもあるタスマニアの森林が題材です。

本展の主な作品構成は以下の通りです。

*作品"Telling Tasmanian Tales"(プロジェクト T.T.T.):
もとみやは2002年タスマニア(オーストラリア)のレジデンスに参加し、プロジェクトを生態系や社会そのものの「新陳代謝」或いは「自己再生する力」に焦点を当てようとしています。タスマニアはカンガルーやレインフォレスト(雨林)など独特の生態系で知られています。観光に訪れる人が自然に目を向ける中、彼女は町中で見かける巨大な木材輸送トラックに注目しました。あまり知られていない現状ですが、森林
資源の供給と消費というパイプでタスマニアと日本は最も強く繋がっています。タスマニア木材の80%以上が日本の製紙工場へ送られ、日本に住む私たちが紙として消費しています(*2)。もとみやは貴重な生物の宝庫である原生林やパルプ工場を訪れたり、アーティストや現地の人々に茶道の点前でお茶を点て、「一服のお茶」と「タスマニアについての話」を交換するプロジェクトを実行しました。
本展は、これらの映像記録を含むインスタレーション「T.T.T.」(TellingTasmanian Tales)を中心に、構成されま す。

*作品"melancholic Benjamin"(ベンジャミンの憂鬱):
絶滅した有袋類タスマニアタイガーをタスマニア産の素材で制作します。5000万年かけて進化したタスマニアタイガーは、虎に似た模様や狼にもみえる体型から、入植者に羊を襲うと誤解され、わずか50年の間に賞金をかけて「駆除」され絶滅しました。2002年、科学者チームが標本からDNAの修復と復元に成功、クローンとして復活させるプランを発表し、話題になっています。先端科学で注目されるタスマニアタイガー
は、まさに絶滅種の再生の象徴的存在です。「ベンジャミン」とはホバート動物園にいた最後の一匹のタスマニアタイガーの名前で、1936年に死んでいます。作品は檻の中の「ベンジャミン」の目線で、変容する森林やインタビューの映像をみるように配置されます。従って"T.T.T."は、最後のタスマニアタイガーのベンジャミンが「動物園の檻の金網越しにみた世界」ともいえます。

本展は米国滞在をはさむもとみやの約二年ぶりの個展で、会期後文化庁在外研修で再び離日する作家の活動にふれる貴重な展覧会です。
是非ご高覧下さい。


*1)プロジェクト「新陳代謝の街」の作品はすでにニューヨーク(MY art prospects"absent/present"展,2001)や東京(ICC”芸術と医学”展,2002)で紹介され、養老 孟司氏の著著「人間科学」(筑摩書房刊,2002)の表紙にもなっている。

*2)オーストラリアの森林は入植者が移住する前の13%に減少している。タスマニアでは毎年22,000ha(東京ドーム4700分)の天然林が伐採されており、15%の現地工場向消費と4%の建築用材をのぞく残りの81%が日本へ木材チップとして輸出され消費されている。皆伐された跡地は焼夷弾が投下され全焼し、全ての生物種は根絶される。(JATAN調べ)

“paper love”(ペーパーラブ シリーズ)
都庁のシュレッダー屑などからつくられ再利用されるリサイクルトイレットペーパーや、そのもとになる再生コピー用紙を積み上げて作られた紙材生産地タスマニア地図、その名産の林檎などをかたどった立体作品のシリーズ。いずれの作品も、日本国民一人あたりのトイレットペーパーの1ヶ月あたりの消費量(7.4巻・東京都の家庭紙調査)や一日に使う紙の消費量(655g・大蔵省通関
統計)などが示されます。日本人の紙の消費量は世界平均の4、5倍で、世界でも有数の紙好きな国民といえるでしょう。

東京都再生債券 〜東京都は再生するか
Tokyo metoropolitan bond ~can we save Tokyo?
東京都が再生をかけて発行した都債は、わずか80分で二億円ぶんを完売し話題になりました。投資の安全性を求める傾向と同時に都民の「東京再生」への期待の高さが伺えますが、果たして再生は可能でしょうか?交通問題の解消などを都民に約束する魔法の手形紙にもみえる債券ですが、実物はまだ誰の目にもふれていません。日頃目にすることのない特殊な価値を持つ紙「再生都債」(ここでは今までの都債券に「再生」の文字をデザインしたもの)として展示します。

そのほか 金継ぎ技法によるビルディング壁の修復、画廊の改装工事ドキュメントや再生トイレットペーパー使用例などの写真を展示。
<同時期開催ISEA2002展覧会/シンポジウムのおしらせ>

もとみやの作品「歌うカリフォルニアレモン」が、10月27日より31日まで、ISEA2002(名古屋港ガーデン埠頭倉庫群4号倉庫)に出展されます。


パネルディスカッション「Embodyment: meat and machines」(10月30日16:00より、港湾会館)
出席者:Nina Czegledy, Motomiya Kaoru, Melinda Rackham, Josephine Starrs, Lehan Ramsay

「往来シンポジウム」第3夜『メディアアートは予感する。新しい身体像と社会組織』(10月30日19:00-21:00(開場18:30)より、港湾会館。英語と日本語による同時通訳あり)

出席者:沖啓介(メディアアーティスト)、もとみやかをる(アーティスト)、トロイ・イノセント(オーストラリア・モナシュ大学デザイン学部講師)モデレーター:幸村真佐男(中京大学メディア科学科教授)