MIZUMA ART GALLERY


トップ › 展覧会・イベント › 筒井伸輔 展

EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2001/05/22 - 2001/06/16
筒井伸輔 展

今展について

筒井伸輔は一貫して蜜蝋(みつろう)を画材に使用し、「虫」というモチーフを表現し続けてきた作家です。
彼の作品の画面に抽象画のように現れている不思議な形は、虫の体の一部分が拡大されたもので、顕微鏡写真で取り出した自然の形をそのままトレースしたものです。透明感があり奥行きを感じさせる独特の質感は、型紙を使って蜜蝋をキャンバス上に流し込むという技法によって生みだされています。近年はギャラリーだけでなく、美術館や大学施設での作品発表の機会も多くなり、筒井伸輔独自の表現方法にひかれる根強いファンが増え続けています。

独自の研究を重ねて出来上がった彼のユニークな表現技法は、自分の主観を削ぎ落として極めてニュートラルな状態になるように作り上げられています。筒井は写 真を写し取って形を作り、蜜蝋を流すという機械的な作業によって作品を制作するわけですが、大袈裟に言ってしまうと、作家自身の意志が働くのはどの虫のどの部分の形を絵にするか決定する点だけであり、手順さえふまえれば誰でもこの絵画の制作が可能だといえます。
筒井はアーティストのエゴや苦悩といったものの痕跡を作品上から消し去り、「制作する」という行為そのものだけを抽出しているのです。そして時に不親切なほど「説明」が欠落している筒井の作品は、逆に私たち見る者に作品に対する自由で自然な鑑賞の場を提供してくれます。

これまでの筒井の展覧会では作品一点一点が常に独立しており、色やモチーフ等の関連性は薄いものでした。今回も蜜蝋を使用した平面作品を制作しますが、今展では取り上げるモチーフを初めて「蜘蛛」一つに絞り、展示される作品すべてが呼応しあうインスタレーションを展開します。画面に現われるのは蜘蛛の身体の一部分や、蜘蛛の巣のごく部分的な図像です。そうと聞かされなければ蜘蛛や蜘蛛の巣であるとは到底分からない、断片的で極めて抽象的な形が浮かび上がっています。
例えば蜘蛛の巣のシリーズの一連の作品は、バラバラと壁に点在してインスタレーションされ、これは3分の1も出来上がっていないパズルのようで、全部ピースが揃って壁が作品で覆い尽くされれば完全な蜘蛛の巣の形が出来上がる仕組みです。 蜘蛛といっても画面にあらわれるのは身体のほんの一部分で、鑑賞者にそれが何であるのか分からないように、筒井は形を謎めいたものに隠して表現しています。
本展は拡大された蜘蛛の世界に紛れ込み、一体どこに蜘蛛や彼らの巣があるのか、見えているのに全く気がつかない、そんな迷路のような空間全体を楽しむ展示となりそうです。

蜜蝋、虫といったスタイルを頑に守り続け、その表現を究めている筒井伸輔が、さらにその内容を深めて新たな試みにチャレンジする展覧会です。