MIZUMA ART GALLERY


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EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2000/12/14 - 2001/01/27
鴻池朋子展

  • ナイファ−ライフ「蟲たちの知らせ」(部分)
  • 180x450cm
鴻池は東京芸大の日本画科を卒業後、おもちゃや家具のデザイナーとして活躍するという経歴を持っており、ミヅマアートギャラリーでは初個展となりますが、そういった寄り道の先々での高い評価などからご存知の方も多いのではないでしょうか。その鴻池が今展で出品するのは、これまでの彼女の制作とは趣を異にして鉛筆のようなタッチで筆で描かれた大型のペインティングとなります。この作風の変化は自分をさらけ出すことへのかつてない彼女の腹の座り方によって起こったことは見逃せず、それゆえに今展が注目に値するものとなっています。
  • 血管森
  • 190x145cm
以前の鴻池の制作中の感覚は「こんなことをしたら恥ずかしい」と思いながら学校のクラスの中でなんとか目立たず嫌われずにいる、そんな羞恥心を持ち合わせた子供(実際鴻池自身がそういう子供時代を送り、今でもその感覚はあるという)の感覚と似ているかもしれません。

しかし今展におけるペインティング制作で彼女を動かしていたのはずっとうまく取り繕って人に見られないようにしていた「自己愛」の世界であったといい、そこが今展の手法においてもその効果においても決定的な違いを生むことになります。そこは反射的に眼を背けたくなる醜悪なものから一目で魅惑されたりする世にも美しいものまで瞬間的な自分の感じ方全てを信じ誰にも邪魔されずに愛でる領域です。

結果、今までと全く違う分泌液を脳内に出しながら初めて制作したような気がする、と鴻池が照れながら述べるように、かつてデザインワークをはじめインスタレーションや彫刻、アニメーションを作り評価を得てきた彼女のイメージをも瞬時にぐっと一変させてしまうような、鋭く強く私達の感覚に訴える作品が仕上がりました。
  • 無題
  • 180x170cm
とはいっても、なぜ今となってペインティングという手法に戻ってきたのでしょうか?その理由は彼女の今までの経験を通して、輪郭というものが、自分が吐き出したものをジャストにキャッチしながら「脳天にビビっと来る」一つのかたちをつくる大切なもので、鉛筆で引く線が最もそれに適しているとわかったからです。それは単なる気まぐれなどではなく、羞恥心の壁を突き破ってしまう為の、本当の自分をさらけ出す為の極めて挑戦的な手法となります。そしてカンバス上であまりにもダイレクトに彼女の生の感覚(ときにそれは毒を含む)を具現してしまうので、ふと我に帰った後の鴻池自身が今更のように羞恥の気持ちでいっぱいになってしまうと言うのも当然かもしれません。
このような作品をいざ前にすると、ここ数年はアートの世界にも顔を出してきていたとはいえ今展を鴻池というアーティストの実質的なデビューと見て良いと思われることでしょう。それはアーティストとして決して早いデビューとは言えませんが、彼女がようやく見つけた今回の表現は今までの彼女の活動を知る人だけでなくとも興味を引き、インパクトを受けることと思われます。この遅咲きのアーティストのデビューを是非ご覧下さい。
  • 「ひえびえと かがやかしく 目ざめる」
  • panel,cotton,acrylic,pencil
  • 200x312cm
会場風景

(中央) 「森へいく?それとも家へ帰る?」
『・・・森へ行くか家へ帰るかは日常のプチ岐路に立たされた時いつも頭に浮かぶ自問です。』 (作家による作品解説より)