MIZUMA ART GALLERY


トップ › 展覧会・イベント › もとみやかをる個展「被膜の領域」

EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2000/04/04 - 2000/04/28
もとみやかをる個展「被膜の領域」

さて4月4日から28日までミヅマアートギャラリーにおきまして、もとみやかをる個展を開催することとなりました。当ギャラリーでの彼女の個展は初めてです。もとみやは医科学史を通じて身体観の変遷を辿る学術研究をしながら、ボディイメージを題材に制作を続けてきました。これまで、実験動物でもあるウサギをモティーフにつかったり、医学標本技術を取り入れて作品を制作したり、温度や動きを取り入れて直接触らせる皮膚知覚体験型のインスタレーションを発表したり、医学史における身体観についてのCD-ROMを制作してパブリックミュージアムで展示するなど、医科学やテクノロジーと芸術を領域横断しながら、アートと日常をつなげる試みをしてきたことで知られています。

普段私たちは、どこからどこまでが自分でどこからどこまでが他人なのか、そして自分と自分を取り囲む周囲の空間との境界はどこにあるのか、深く意識することはありません。自分の領域、自分がどう特定されているかは、国籍や性別、住民票、学生証、免許証、パスポート、保険証などの身分証明書などで特定された気になっていますが、それらは本当に確実なものでしょうか?現代日本の社会の中でも、企業へ永久就職したとは考えにくくなっている不透明な時代性を敏感に感じているもとみやは、今回作品を通して、この領域について −つまり「個人のアイデンティティの在りか」について−言及します。彼女は個体の内側と外側の境界を作るものを“皮膚”と言い表しており、今展では皮膚を境界線としたパーソナリティの枠組を辿ることを試みます。その領域を、自分を取り巻く環境や自分が関わってきたもの全て〜衣服、シーツ、家具、職場、街〜へと終わりなく拡張する“皮膚”として視覚化し、ユーモアやアイロニーを交えながら「個人のアイデンティティの不定性」を受容しようとするものです。

もとみやの作品は、その背景に関わってきた実地の学術研究から生まれる考察が無関係ではないでしょう。今までも作品を通じ、視覚に大きく頼りがちな現代の私たちがおろそかにしている原初的な皮膚知覚の世界などを独特の説得力で表現してきました。今展でも単に観るものに美しさだけを感じさせるのではなく、社会に呼吸する身体の存在を作品から感じさせてくれることでしょう。展覧会を訪れた皆様に「アイデンティティの領域」とは何かを、そして「自身の身体のリアリティ」についても、五感をフルに使って感じてほしいと思います。