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EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2000/05/11 - 2000/06/10
筒井伸輔 展

  • installation view
筒井伸輔は今まで一貫して蜜蝋(みつろう)を画材に使用し、「虫」というモチーフを表現してきた作家です。彼は独自の研究を重ね、ユニークな技法で作品を制作しています。今日は少しだけその技法を覗いてみましょう。

彼の制作はまず身近な場所で虫の死骸を集めることから始まります。大きめの虫は事前に砕いたり、煮たりして分解し、それらをプレパラートにはさんで顕微鏡写真に撮ります。次にスライド化した写真をプロジェクターで投影し、トレースして型紙を作り、それをキャンバス上に置いて、油彩や顔料などで着色した蜜蝋を色別に順番に流し込んで絵を組み立てていきます。絵を描く、というよりはパズルのようにモチーフが画面に埋め込まれるのです。それは琥珀に閉じ込められた虫の化石にも似ています。
  • 2000
  • Wax.Oil
  • 55x48x3cm
そうして出来上がった筒井の作品は、虫の死骸というグロテスクなイメージを使用しているにもかかわらず、蜜蝋の持つ透明感のある質感が印象的な、まるで美しい抽象画のように見えます。

画面に現れている不思議な形は、蛾の生殖器やつぶれたバッタ、蚊やハエなど虫の体の一部分が拡大されたもので、手が加えられていないありのままの「形」です。偶然によって取りだされただけなのに、それら虫の形のバリエーションの多彩さには驚かされます。筒井がモチーフとしてずっと虫にこだわり続けるのは、虫を通して無限に存在するものの形を探求しているからかもしれません。彼の作品は、ものの「形」や「色」は尽きることがなく、美術表現にはまだまだ様々な可能性が残されているということをも教えてくれているかのようです。
筒井の作品には流行もメッセージも含まれていませんが、それゆえにそれらを超越した普遍的に共有できる心地よい空間を提示しています。それは単に表面上“きれい”なのではなく、作家の探求心や観察眼によって作り上げられた、いわば異なった角度からとらえた日常であり、私たちに普段見落していた様々な「何か」を考えさせてくれる空間なのです。 今展では蛾の生殖器などをモチーフに、大型作品を含む全て新作が発表されています。
  • 2000
  • Wax.Oil
  • 182.5×132.5×3cm
  • 2000
  • Wax.Oil
  • 182.5×132.5×3cm