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EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

1999/05/11 - 1999/06/05
棚田康司展「Domination & Submissionー支配と従属ー」

  • 会場風景
  • 1999
棚田が制作するのは木彫の人物像ですが、顔の部分は自分の顔を石膏で型取りしてFRPで作ったライフマスクになっています。彼が「自分」にこだわるのは最も私的なものを使って個人を深く掘り下げていくことが、逆に他人や社会、民族や歴史をも意味することになるのではないかと考えているからです。けれど作品の中のマスクは、余分なシワやふくらみが削り取られ「自分」から私的なものを取り払い、ピュアなひとりの人間としての顔に変わっています。作家自身でありながら他人の顔となったそのマスクは、誰とでもあてはめられる普遍的な「顔」として提示されてきます。
また、手の部分も本体の木とは異素材になっていたり、胴体に繋ぎのビスが打ち込まれていたり、塗料が塗られていたりと、木彫の持つ静けさの中にどこか荒々しいものが混在しているのが彼の作品の特徴であり、魅力でもあります。

本展で棚田は、社会的関係の「Domination&Submission」、「支配」と「従属」をテーマに新作を発表します。この社会で生きている私たちは、自由に生きているようで会社においても家庭においても各々が常に何かを支配し、あるいは何かに支配され従属しているような状態であるように思います。しかも時には支配され従属することを不自由と感じず、逆に安心感をもたらしそこに安住し馴れ合うようにもなっています。そういった中で自己を確立することの難しさを今回棚田は表そうとしています。例えば今回発表される作品の「縛られているかのように手を交差させ天を仰ぎ見るような像」や「不自然に首を上に向け口に舌のような板が入れられた人物像」などには、傷つきながらも他人との関係の中で自分をしっかり見つめ自己を確立していこうともがき苦しむ様相が感じられ、観るものを圧倒させる静かな力があります。
  • 「飴と鞭」
  • 1999
  • 木、FRP、ミクストメディア
  • H160×W60×D125cm 
彼が作品を通じて表現しようとしているのは、「自分と他者の関係」や「社会的常識と自己の内面との葛藤」などです。しばしばこれらのテーマは重く否定的なものになりがちですが、棚田の作品にはすべてを受け入れる清々しさや肯定的な強さが感じられます。
先の見通しのつかない中で不安や緊張を常に感じながら生活し、段々と自分が目指すものさえ見つけるのが困難な現在になってきましたが、私たちがこの現実から逃れて生きていくのは不可能であり、同様に生まれると同時に背負っている性別、人種、国籍も、消し去ることは出来ません。作家はそれらを拒絶ではなく受け入れ、否定ではなく肯定していくことで、その先にあるものを手に入れようと考えているのです。

棚田康司は若手ながら昨年はドイツで作品を発表して好評を博すなど、今後の幅広い活躍が非常に楽しみな作家です。
  • 「ゴースト」
  • 1999
  • 木、FRP、ミクストメディア
  • H240×W70×D25cm
  • 「支配と従属」
  • 1999
  • H145×W40×D40cm