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EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

1999/06/11 - 1999/07/03
パトリック・トザニ「パトリック・トザニ展」

トザニの作品の特徴は、写真というメディアの特性を逆手にとったような、逆転的な視点と発想にあります。彼は写真を「現実の存在の強さに比べれば写真の表現には限界があるが、現実を正確で忠実に記録することができる」と定義づけています。そして写真の限界を可能性に変え、特質を最大限に生かした写真作品を作り出すのです。
 例えば水準器の水面や女性の靴のヒール、スプーン、真上から見た人間の頭部など物体の一部分を被写体に、大きく拡大してプリントした作品があります。写真がただ現実を記録しているにもかかわらず、1mほどに拡大された靴のヒールやスプーンが目の前に現れると、私たちは戸惑い、自分たちの「見る」行為がいかに固定観念に捉われていたか気付かされます。
 今回の個展では、大型プリントではなく、"cdd"(corps du dessous/下から見た体)と"PO"(Portrait/Figure)という小型プリントの連作です。それぞれ大きなプリント版もありますが、今回のシリーズはサイズを縮小しただけではなく、全く異なったコンセプトのもとに制作されたものです。
 "cdd"(下から見た体)は、ガラス板の上で出来るだけ小さくうずくまったモデルの姿を下から撮影し、人の体を普段見ることのない真下からとらえた作品です。すでに発表ずみの大型プリント版は等身大以上に引き伸ばされ、大きな濃密な固まりとしての人体が提示されていましたが、小型版では体の姿勢や動きなど、モチーフのディテールがより深く観賞できる作品に仕上がっています(同封の写真参照)。
 "PO"は、ぼやけた肖像が点字用紙の上に投影された作品です。画面に写っている点字は手で触れても凹凸は感じられず、そこに重ねられた人物像も非常にぼんやりしていてどんなに目を凝らしてもその像が何なのか分かりません。これらの作品には視覚を持つ者にも持たない者にも「見る」ことのできない肖像が浮かび上がっているのです。 コンパクトな大きさの"cdd"と"PO"のシリーズは展示空間全体に一連の流れとしてインスタレーションされ、同じテーマを持った連作を一時に、同じ空間で見ることが可能になります。作品個々の観賞とはまた別に、シリーズを通して一貫してとらえようとしたもの、見せようとしたものの全体像を、私たちは理解することができるのです。この小さな作品は、トザニの新たな展開ともいえ、作家は今後も大小様々なプリントを併用して制作していきたいと抱負を語っています。
 本展は、現在大変注目されているトザニの新作を日本で初めて発表するもので、非常に興味深いものになるはずです。