MIZUMA ART GALLERY


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EXHIBITION ⁄ 展覧会・イベント

2017/06/21 - 2017/07/15
未来の痕跡ー東南アジアの現代美術

  • ロバート・ザオ・レンフイ/Robert Zhao Renhui
  • Kings (detail)
  • 2009-17
  • タイプ C プリント、ディアセック
  • 150 × 100 cm (part of set)
  • © Robert Zhao Renhui
ミヅマアートギャラリーでは6月21日(水)より「未来の痕跡−東南アジアの現代美術」展を開催致します。本展ではキュレーターにヘルマント・ソエルジャント氏を迎え、インドネシア、フィリピン、シンガポールの6名の作家による最新作を発表致します。

近年、東南アジアでは新たな美術館、国際展、アートフェアやアートを支える人々が増加し、美術市場の発展は留まるところを知りません。現地の現代美術が世界中から注目を集める中で開催する本展では、6名の作家が各地域の多様性を反映しつつ、「素材への大胆な試み」、「常識への懐疑」、「伝統美術と現在のポップカルチャーの融合」という共通したテーマを提示します。 

ロバート・ザオ・レンフイ、アンキ・プルバンドノ、アガン・ハラハップの3名の作家は、それぞれ異なる写真の技法を用いて映像が持つ「虚構性」と「現実性」を鑑賞者に問いかけます。
2016年の※1プルデンシャル・アイ・アワードでノミネートされたロバート・ザオ・レンフイ(1983年生まれ)は研究者としての一面を持つシンガポール人作家です。彼は作品の中にストーリーを幾重にも重ねることによって、鑑賞者が見ている世界がドキュメンタリーか?フィクションか?という疑問を誘発します。ザオ・レンフイの制作の基盤は自然界を表現することへの探求であり、本展では日本の鳥取砂丘を舞台に、作家が人間と動物の関係をより深く、そして独創的な方法で解釈した作品を発表致します。
  • アンキ・プルバンドノ/Angki Purbandono
  • Sorry No Pictures Today (3)
  • 2017
  • タイプ C プリント、ライトボックス
  • 20×100 cm
  • © Angki Purbandono
インドネシア人作家のアンキ・プルバンドノ(1971年生まれ)の作品は、日用品をスキャンし、拡大プリントをする「scanography」という彼独自の方法で、ありふれたモティーフに新たな見方を与えます。作品に見られるハイパーリアリズム的提示は、我々の先入観を再考させ、人間の記憶や感情を呼び起こすという写真そのものが持つ役割を浮かび上がらせます。そのため、彼の作品は社会的な分裂を解決し、共感を引き起こす手段としても存在します。

このように現実を再構築するカメラの力に加えて、アイロニックな要素を含んだ作品を制作しているのは、インドネシア人作家のアガン・ハラハップ(1980年生まれ)です。ハラハップの作品は、彼自身が考えた非現実的なシナリオを元に、異なる背景を持つ人々をデジタル加工したモンタージュ技法によって画面に並置します。新作の「When I Have to Fight Myself」ではアメリカの有名なプロボクサーであったロッキー・マルシアノが、ハリウッド映画「ロッキー」でロッキー役を演じたシルヴェスター・スタローンと戦っている姿を映し出します。このようにフィクションとリアリティーの境界線をあいまいにする行為は、私たちが物事の事実を知るために、どれほど写真に依存しているのかを明らかにし、さらにフェイク・ニュースやパパラッチが蔓延する時代に極めて核心をついているように見えます。

今年のヨコハマトリエンナーレに参加するフィリピン人作家のマーク・フスティニアーニ(1966年生まれ)は、※2現象論を用いて、人がどのように空間と時間を経験するかを探求する作品を制作しています。反射する素材を用いて、イメージが終わりなく重なる錯覚を生み出し、無限の深奥さを作り出します。80〜90年代に起きたフィリピンの芸術運動の一つであるソーシャルリアリズム派と関わり、近年は※3マジックリアリストの表現技法を取り入れ、鏡の歪みを通して社会や文化に対する批判を表現しています。

  • インディゲリラ / indieguerillas
    Living Immensely
    2017
    真鍮
    136 × 125 × 17 cm
    ©indieguerillas
  • マーク・フスティニアーニ / Mark Justiniani
    Debris(部分)
    2017
    ミクストメディア(木材、アルミニウム、ガラス、電気装置)
    165 × 43.2 × 59 cm
    © Mark Justiniani
グラフィックデザイナーとしての経歴を持つインディゲリラ(ミコ・バウォノとサンティ・アリエスティオワンティによるアーティストデュオ)は現在のポップカルチャーやブランドロゴ、そしてジャワ島の伝統的な影絵人形劇であるワヤンの美学を一体化させた作品を制作しています。旧来的でないメディアやデジタル技術、レディ・メイドの概念を組み込んだ力強い作品は、国際的に評価され、2016年のプルデンシャル・アイ・アワードにノミネートされました。グローバル化の圧力や消費主義的な影響を想起させる一方、自らのルーツとなる文化遺産を尊ぶことをインディゲリラは作品を通して我々に伝えてくれます。

インドネシアの現代美術界で最も重要な作家の一人であるヘリ・ドノ(1960年生まれ)は、2015年のヴェネツィアビエンナーレのインドネシア館代表に選ばれるなど、現在まで30年以上にわたり国際的に活躍してきました。絵画、キネティックスカルプチャー、インスタレーションやパフォーマンス等、幅広い分野の作品を制作し、ワヤンのイメージと現在の政治批評を融合させ、風刺とブラックユーモア溢れる作品を多く発表しています。1992年から日本各地で展覧会に参加し、2016年にはミヅマアートギャラリーにて個展を開催。今夏は森美術館と国立新美術館にて同時開催される東南アジア美術の企画展「サンシャワー」にも登場します。

国際社会が政治的、経済的、そして社会的に不安定な時期を迎えている中でも、経済面からも美術市場としても急成長を続ける東南アジア。騒然とした時代の中でもこの「未来の痕跡」展の作家たちは、創造的な表現が前向きな変化への力となりうること、そしてあらゆる常識に疑問を抱き、相手に敬意と受容の心を持って接することの大切さに気づかせてくれるでしょう。


※1 2014年に「グローバル・アイ・プログラム」によって結成されたアジア広域で目覚ましい活躍をしている新進アーティストを対象にした賞。最終候補が展覧会を開催し、会期中に全体のグランプリ「エマージング・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」が決まる。http://prudentialeyeawards.com/about

※2 存在する物体そのものを知覚しているのではなく、知覚を成立させている色や形などの感覚所与のみが、確実なものであるとする思想。

※3 日常的なものに非日常のものを融合させた作品に対して使われる芸術表現技法用語。
  • ヘリ・ドノ/Heri Dono
  • The Culture of Knives that Transform into Flowers
  • 2017
  • キャンバスにアクリル
  • 150 × 200 cm
  • © Heri Dono
  • アガン・ハラハップ/Agan Harahap
  • When I Have to Fight Myself #3
  • 2016-17
  • タイプ C プリント
  • 71.5 × 100 cm
  • © Agan Harahap