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山本 昌男 展 「ゑ」(TOKYO)

2006年03月01日(水) - 04月01日(土)

山本昌男は写真を使ったインスタレーション作品の展示を行なうことで知られ、近年はアメリカを中心に世界各国で活動し、欧米では高い評価を受けている作家です。今回ミヅマアートギャラリーでは見慣れない謎のような「ゑ」という文字に象徴されるように、幻の写真家として噂されていた山本の写真展を展開いたします。


 


山本昌男は1993年に初の個展「空の箱?」開催以来、手のひらサイズの写真をギャラリーの壁にいくつも貼り付け、自由に展開させていくインスタレーション作品を発表し続けています。それは壁の1点を中心に左右上下に弧を描くように広がってゆくものもあれば、地平線のように横に連なってゆくものもあり、その時々で異なる様相を見せてくれます。


 


山本の撮る植物、空などの風景や人物は、それぞれが異なる独立した写真にもかかわらず、自然と繋がり合って、広大な世界を作り出しているように見えます。作品は終わることなく過去から未来へと、私たちの繰り返される日々の営みのように続いていくのです。


 


山本の写真はモノクロやセピア色を基調としおり、ときにカラーで現像されますが、どれもが淡くどこか懐かしく、まるで古いアルバムを見ているようです。山本個人の思い出のようでありながら、実は誰しもに共通する普遍的な世界がそこにはあります。そんな山本の象徴される作品の一つにアルミのケースに一枚の写真を収め、そこに樹脂を流し込んだものがありますが、私たちは自身の思い出と重ね合わせ、樹脂で包まれ消えることのない記憶を、そっと大切にしまっておきたい衝動に駆られてしまうのです。


 


「私のインスタレーションを見る時に、理解しようとするのではなく、例えば、風景を観る、もしくは眺めて欲しい」と山本は語ります。社会事情、現代問題を反映させる作品の多い現代アートのなかで、山本の作品はただそこに佇んで私たちに無心で眺めることを求めています。写真を引き伸ばすことは決してせず、伝統的な日本人独特の精神性に拘る山本は現代の傾向とは全く相違の作品を作り出しています。ゆっくりと眺めているうちに、観客の心の中にはなにか叙情的な感情が沸き起こることでしょう。


 


ぜひその感情や独自の物語を大切に、山本の作り上げる世界をご堪能いただければと思います。