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岡本瑛里 展 「謡にまみえに」(TOKYO)

2010年11月24日(水) - 12月25日(土)

11月24日(水)よりミヅマ・アクション2Fにて、岡本瑛里の初個展を開催する運びとなりましたのでご案内申し上げます。


 


1987年千葉県生まれの岡本は現在、東京藝術大学大学院絵画専攻に在籍中の若手作家です。2010年の学部卒業制作に出展した作品が台東区長賞、O氏記念賞を受賞し東京都台東区に買い上げられました。その他多数受賞歴があり、まだ学生でありながらも高い評価を受けています。


 


今展ではメインの油彩とアクリルを混合して描いた新作の絵画に加え、鉛筆のみで描写される幻想的なドローイングも多数展示致します。


 


今回出展する予定の卒業制作作品「かやせ、もどせ」は、森の奥深くで神隠しにあった子供達が、大勢の生き物の群れに入り混じっているという独創的な油絵です。見覚えがあるようで実在するか解らない生き物と、様々な表情を浮かべ、中には戯れているような子供達が混在します。そのように不思議な物語の気配を漂わせ、西洋の宗教画を思わせる質感で描かれた奥行きある画面からは、息遣いが聞こえてくるほどの生々しさと存在感があります。作品をずっと見つめているとどこか怪しい世界へ引きずりこまれていきそうです。


 


岡本は、本展のタイトル「謡にまみえに」は「霊の声に再会しに」という意味が近いと言います。「謡(うたい)」とは能の声楽を指すように、岡本の作品は一貫して能や民俗学、アイヌ民族の思想に大きく影響をうけています。自然や動植物、身の回りの道具にも神が宿っていると考え、それらを畏れ敬う姿勢で生きるアイヌ民族と、日本人が古くから持つ自然と共生する思想は深いつながりがあります。環境危機を叫ぼうともどこか矛盾した生活を送る現代こそ、このような思想が必要なのかもしれません。


 


今回発表する絵画群には、かつて神聖な存在であったと伝えられる山犬がしばしば象徴的に現れます。画面の上で山犬、人間、その他様々な動植物が混在する。その世界で、岡本は古来の民俗信仰を織り込み新たな物語を紡ぎ出していきます。一見非現実的なようでも、目を凝らせば限りなく現実と寄り添っているこの物語の展開を、是非ギャラリーにてご覧頂きたく思います。