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森淳一展「tetany」(TOKYO)

2014年12月03日(水) - 01月10日(金)

12月3日(水)より森淳一展「tetany」を開催いたします。 2011年の「trinitie」展では骸の顔を持つ三位一体像「trinity」を発表し、鮮烈な印象を残した森淳一。形そのものまで消えそうなほどカービングされた作品は、削り取られた部分の気配がその内部に漂い、消滅していった時間を眼に見えない痕跡としてまとっていました。 今回、森淳一は初めて人形(ひとがた)の作品を出品いたします。森は2006年に、雑誌のインタビューで人形の制作についてこのように語っています。 「学生時代は粘土で人体を作っていたんです。そこから離れたけど、また身体にたどり着きたいと思いながら制作してきました。ただ、人形を作品として現代に成立させる方法がまだ見つからないんです」 人体に永久的な命を与える「人形」は彫刻において最も代表的なモチーフでですが、長崎に生まれ原爆の話を聞いて育った経験から、人間は儚く一瞬で消え去ってしまう存在ととらえてきた森にとって、その違和感や罪責感は、人形の制作を長い間踏みとどめてきたと言えます。インタビューから8年、その間に社会では様々なことが起こり、大きく変容してきました。自身の変化も含め、森の中で人形を作る準備に必要な時間が経ち、今回の人形の制作がはじまりました。 本展では、ある画家の描いた少女、60年代アメリカを舞台にしたテレビドラマの登場人物、哲学者の言葉、本の中に出てきた写真など、日々の中で得た様々なイメージや情報が記憶として淘汰され、彫刻、ペインティング等の作品に昇華しています。 前回のtrinititeが「聖」とすれば、今回のtetanyは「俗」に眼を向けた展覧会と言えるかもしれません。 タイトルのtetany(テタニー)とは医学用語で、神経や筋の異常な興奮により生じる筋の強縮状態を指し、手足の指に屈曲した拘縮を起こす症状のことを言います。一見ばらばらに見える作品群を唯一つなげる言葉として森が名付けました。 作家の思考の回廊を一緒にさまよいながら、消滅した時間の重さと軽さ、聖と俗、正常と異常と、相反し拮抗しながらも作品が共鳴しあう本展をぜひご体感いただけましたら幸いです。