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山口晃展 「室町バイブレーション」(TOKYO)

2016年11月02日(水) - 12月17日(土)

山口晃は昨年より精力的に個展を開催しており、水戸芸術館現代美術ギャラリー、霧島アートの森、馬の博物館、そして現在は愛媛県美術館にて(~11月20日まで)展示を行っております。


また、2013年には画家のユニークな視点から日本美術を読み解いた『ヘンな日本美術史』で小林秀雄賞を受賞、本年は山梨県立富士山世界遺産センターのシンボル絵画として5.4 x 7.7 mの壁画を制作するなど目覚ましい活躍を続けています。


 


大和絵風などと評される山口の独特の表現は、美術大学の油画科在籍中に「西洋絵画」に対する内発的動機を見つけられなかった状態から生まれたといえます。


長い日本の歴史から分断された借り物の「油絵」という技法で、一体何が描き出せるのか、そんな行き詰まりから脱するきっかけとなったのが日本の古典との出会いでした。高度な表現力を持つ先達の存在に感嘆し、「これこそ学ぶべきであり、この流れの末たらん」と奮起するに到ります。日本の伝統的絵画の様式を学び、「型稽古」を続けることで先達の心持ちを会得できたら、現代の画材・画題を用いてもその末流になるのではないかと、油絵具を使って日本の絵画のスタイルを継承していったのです。


 


このように長年日本絵画の様式、構造を気にかけてきた山口は、本展で室町(から明治以前の)絵画と20世紀以降の現代美術の流れに共振性をみる、という観点で制作した作品を発表いたします。


新作群のキーワードとなるのが、


雪舟の平面的モチーフの多層化から生じる奥行き。


狩野派の襖絵の持つ、空間性をも獲得する金箔の効果への陶酔。


セザンヌの知覚的な絵画への官能。


散歩の途中に目にする工事現場や電柱、構造体への執着。


メカ、東京モノレールの座席、桂離宮へのコンポジションへの興奮・・・等


 


一見してバラバラとした現象への興味は、山口の中では等価であり、それらは意識せずとも自然と共振してしまう。そんな複数の要素の共振に寄って立ち現れた絵画、立体およびインスタレーションが会場内で展開されます。


今まで山口が問題にしてきた、現代日本の中でどう絵画を制作するかという点に、真っ向から向き合うこととなる本展覧会を、どうぞご体感ください。