もとみやかをる展 「MOTOMIYA KAORU 2005」(TOKYO)
2005年09月08日(木) - 10月15日(土)
9月20日よりミヅマアートギャラリーにて、日本では3年ぶりの個展となる、もとみやかをる展「MOTOMIYA KAORU 2005」を開催いたします。
もとみやかをるは環境のなかの身体を注視するインスタレーション作品を制作することで知られ、日本をはじめ海外でも度々作品を発表しています。2000年以降、もとみやは「金継ぎ」という日本独自の技法などを用い、各国で「壊れたもの」やその過去と対話し「修復」する行為を重ねてきました。この「修復と再生」プロジェクトは7カ国以上で実施されています。
「金継ぎ」は陶磁器のきずを漆で継いで金粉で化粧する修復技法で、伝統工芸として受け継がれてきました。そこには「きずを隠さず、新たに現れる景色をむしろ楽しもうとする」日本独自の哲学があります。もとみやは、「きず」というマイナス要素を美へ変換させる逆転の発想に触発され、そのアイデアを私たちの日常へと拡張しました。食器や家具、衣服などの日常品から建物、絶滅した動物種まで、もとみやの修復は環境全域に及び、2003年には、ニューヨークのサウスビーチ精神病院で個々の体験を綴った皿を割り、金で継ぎ合わせるという行為を通して心を修復するかのようなワークショップも実施しています。同年、セルビアモンテネグロで目にしたという爆撃で落ちた橋を、金色の花タンポポを使って架空の修復をした作品を発表し、プロジェクトの展開を感じさせました。
「年をとり手当てを必要とするのは生物の身体だけではなく、街や建物、橋、森なども生きていて、改装や再生を繰り返している」と語るもとみやは、2004年、メルボルンで壊れたカタツムリの殻を金継ぎで修復しました。本来は骨董陶磁器に用いた技法をカタツムリという生命体の一部に施すことで、生物の身体も街も全て同じ視点で捉えられ、ひとつとなり、もとみやの活動が私たちの暮らす世界を包括したように感じます。
本展では、このような「修復と再生」プロジェクトの5年間の記録、ワークショップの映像やミヅマアートギャラリーの床に新たに金継ぎを行う公開制作、そして、本年バンコックで発表した、シルクにタイの子供達が訳した物語を綴り異文化間の“翻訳による「ずれ」”にハイライトしたインスタレーション作品、 “White book” を紹介します。
協力:深沢アート研究所