天明屋尚展 「分身」(TOKYO)
2005年10月26日(水) - 11月26日(土)
天明屋は、狩野派、琳派、浮世絵など日本の伝統絵画形式を独学で学び、それらを現代の画材アクリル絵具で継承し、現代風俗や社会諷刺などを面相筆によりデジタル的な線と面で描く、繊細さと大胆さを合わせ持った独自の絵画表現「ネオ日本画」を開拓した作家として知られています。日本固有のアウトロー文化、室町時代の「婆娑羅(ばさら)」、江戸時代の「傾奇者(かぶきもの)」の精神を平成の世に継承した反権威的要素を核に、精力的に制作・発表し自ら絵筆で闘い、日本伝統絵画の流派を皮肉った「武闘派」を名乗るにふさわしいでしょう。芸術とは破壊であり創造であるという本質を熟知した確信犯の「ネオ日本画絵師」が描く、「ネオ・ジャパニーズ」作品は、アートファンだけでなく様々なジャンルの人々に狂気(侠気)のすさまじさと鮮烈な感動と影響を与え続けて、展覧会以外でも精力的に日本のみならず世界に活動の範囲を広げています。
本展のテーマは「分身」。自己像幻視、内なる他者、双児など、「もう一つの存在」「分身」が主要なモチーフとなります。また刺青を「文身」とよぶ意味もそこにはかけられています。今回天明屋は「分身」を大きくわけて同調する分身、対照的な分身の2種類と解釈し平面作品へと具現化しています。「分身」は、西はポオやドストエフスキー、そしてここ日本では鴎外や鏡花、龍之介、最近では村上春樹や東野圭吾など文学として「分身」を表現したものも数多くある、古今東西様々な文化人・芸術家の興味を惹きつづけたテーマでもあります。これほどまでに数多の芸術家に「分身」を語らせたその魅力とは?様々な芸術に度々用いられ人を惹き続けてきた、ある種魔力を持ったこのテーマを、今の日本に置き換えて天明屋がどう調理するのか???この神秘的かつ精神的テーマに天明屋が果敢に挑みます。本展では、人物に刻まれた刺青(文身)の龍が体を抜け出し「分身」となり、天空高く舞い上がるその離脱して行く瞬間を精緻に描いた新作「BUNSHIN」を中心に、双頭の白虎を描いた作品など全て新作の禍々しい雰囲気の作品で会場が埋め尽くされます。
また天明屋は来年ドイツで開催されるワールドカップに向けたプロジェクトの一貫として、「『公式アートポスター2006 FIFA ワールドカップ ドイツTM』(Official Art Poster 2006 FIFA World Cup GermanyTM)」において、FIFAが世界中から選んだ14人のアーティストのうち、唯一の日本人として金箔地に重い鎧兜をつけた武者たちが一つのサッカーボールをおいかけるという作品を制作し提供しています。
http://fifaworldcup.yahoo.com/06/en/o/artposter.html ←FIFA公式アートポスター紹介ページ
これらからもわかるように、天明屋の作品は常に、重い慣習や迷信、歴史や戒めを背負いながらも、ひるむことなく相手と向き合い闘っています。そして現代の私たちが忘れてしまった、退化した、もしくは捻じ曲がって進化?した闘争本能を揺り起こし、揺さぶってくるのです。天明屋は本展でも、「分身」にまつわる禍々しい慣習や戒めをも軽々ととびこえてゆく、生命力みなぎる、そして美しい幻想の世界を作り上げて私たちに提示してくれることでしょう。