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棚田 康司 展(TOKYO)

2006年05月24日(水) - 06月24日(土)

ミヅマアートギャラリーでは2年ぶりの個展となる棚田康司展を開催いたします。


 


棚田は木彫の人物像を制作することで知られていますが、近年になり、木にFRPやステンレスを組み合わせ、顔面にはマスクを纏ったスタイルから、異素材を使用しない一木造のダイナミックな彫像へと作風を一変させました。


 


本展は「水平線の少女」と名づけられた東西南北を表わす4体の少女像を中心に構成されます。このタイトルは、少女のもつ儚さや刹那的な美しさと、夕日や朝日といった大自然のもつ美しさには共通の美がある、という棚田の強い想いが込められています。少女特有の不安定さ、それゆえの純真さによって放たれる一瞬の輝き。棚田によって鮮明に捉えられたその姿は、壮大な自然とひとりひとりの人間との価値が変わることなく同等なのだということを私たちに教えてくれることでしょう。


 


2003年から始まった一木造のシリーズは悲しみや不安など感情を露にしたものが多く、厳しい現代社会に懸命に立ち向おうとする人間の姿が映し出された作品でした。しかし、本展の「水平線の少女」においては、いままでの作品に共通の悲痛さが消し去られ、私たちを見守るかのように静かに佇んでいるように見えます。また、彼女たちの纏う毛糸のパンツは、古来より人々がお地蔵の涎掛けを崇拝の意を込めて繕ったように、棚田もまたひとつひとつ編むことで少女たちへ敬意を表明しています。そしていつか像の毛糸が古び失われてしまったとしても、誰かがまたそれを編み、その想いがずっと継がれてゆくことを願っています。 


 


先頃、損保ジャパン東郷青児美術館にて開催された「DOMANI・明日」展で多くの反響を呼んだ棚田康司。夏には水戸芸術館でのグループ展を控え、その勢いはとどまるところを知りません。棚田によって魂の吹き込まれた彫像の、生まれたばかりの透通る肌や紅潮した頬、目に涙を浮かべた不思議な表情など、台座から頭の先までどうかお見逃しなくご覧下さい。