山本竜基 展 「千の自画像」(TOKYO)
2006年07月26日(水) - 08月26日(土)
ミヅマ・アクションにて初個展となる若手作家、山本竜基「千の自画像」展を開催いたします。山本は1976年生まれ、01年に東京造形大学を卒業、97年よりアーバナート#6展佳作を受賞し、05年には第8回岡本太郎記念現代芸術大賞優秀賞に選ばれるなど、今後の活躍が大いに期待される作家です。「千の自画像」と名付けられた本展は、その名の通り、キャンバスにアクリル絵具を使用して自画像を描く山本の、千にも及ぶ自画像で埋め尽くされる展覧会となります。
山本竜基は、今まで徹底的に自画像に拘り続け制作を行なってきました。神奈川県郊外の山中にある美大で、社会との繋がりもなく、唯一リアリティーを感じるのは自分自身であったと山本は言います。どちらかというと引きこもりがちの自分を曝け出し、ある種のナルシスティックな痛みや感動を味わうことで自己を実感し、自身の存在を肯定しているかのように見えます。 本展で発表する作品のひとつに、約2×3mのキャンバスの中で、無数の山本が激しい争いを繰り広げる様を描いた「個人内戦争2」があります。憎悪を露にした暴力的な山本、虐待に苦しむ山本、その様子を他人事のように傍観している山本・・・・。すべて紛れもなく山本自身であり、彼の中に潜む人格の怒り・喜び・悲しみや恨み・妬み・嫉みといった感情が、複雑に絡み合い混沌としている様が画面に表出されています。
山本は作品を制作する際に、まず絵のイメージを軽くドローイングし、その作品に最適な構成を考えるべく、自分自身を撮影することから始めます。撮影は1度に1000枚撮ることもあるほど徹底しており、あらゆる表情やポーズを駆使し、かたちを追求しています。そして撮影した写真をパソコン上で配置し、下絵を作り、アクリル絵具で描く作業に入ります。描く作業はときに数年を費やすこともあり忍耐を要するものですが、けしてCGプリントにすることなく、山本がひとつひとつ手で描き続けるのは手技を信じているからです。山本はそれを「絵力(えじから)」と呼んでいます。長谷川等伯、伊藤若冲、尾形光琳などの昔の巨匠に、恐ろしい程の絵力を感じ、少しでも近づきたいのだと。山本の作品から、私たちは、デジタルには真似出来ない手技の力、絵力を感じ取ることができるに違いありません。
数年の歳月をかけ無数の自画像を描き続ける山本の作品には、近年はやりのニートやひきこもり、キレやすい自我など、自分以外は皆風景にしかみえない現代の世代の感覚が映し出されています。しかし、山本が自己と真剣に向き合うその姿からは、むしろ作品に映る日本の歪んだ個人主義とは正反対の、真っ直ぐな視線や力が感じられます。