Susan Philipsz "Did I Dream You Dreamed About Me."(TOKYO)
2007年03月14日(水) - 04月14日(土)
スーザン・フィリップスによる日本初個展 “Did I Dream You Dreamed About Me” を開催いたします。
現在ベルリンとベルファストに拠点を置くグラスゴー出身のフィリップスは自分の歌声を使ったサウンドインスタレーションを手がけ、2007年ミュンスター彫刻プロジェクト(skulpture projekte munster07)に招聘されるなど国際的に活躍する作家です。
彼女は様々な場所に設置したスピーカーから歌声を流すことにより、音と空間の関係、サウンド、特にポピュラーソング、が人にもたらす情緒的・精神的効果を追求し、聞く者に場所への気付きを促します。
これまでに作品を発表した場所にはギャラリースペースだけでなく、スーパーマーケット、バス停、教会など私達の日常生活に欠かせない場所があり、予期せぬ場所で彼女の歌声を耳にした人々は自分がいる場所と、置かれている状況とのギャップに戸惑いながらも聞き覚えのある歌謡曲に共通の懐かしさを抱き、当時の時代背景に思いを馳せます。その集団としての“懐かしさ”はフィリップスの柔らかな歌声に誘われて個人的な感情や過去の経験に対する思いへと移行していき、人々は今自分が存在する場所への認識を新たにします。
フィリップスの代表作のひとつに1999年にスロベニア共和国の首都リュブリャナで行われたインスタレーション“The Internationale”があります。市民が日常的に行き来する地下道に取り付けたスピーカーから流れるのは、かつて社会主義者たちを鼓舞し熱狂的に歌われたその名も“The internationale”。今となっては誰にも歌われなくなってしまったこの楽曲をフィリップスはマイクに向かって優しく囁きます。この革命歌は現代に生きる人々の前で元来の意味を復元することなく、過ぎ去った熱情を虚しく思い起こさせるのです。
今回の“Did I Dream You Dream About Me”では薄暗いギャラリースペースにスピーカーから流れる歌声のみといういたってシンプルな手法でフィリップスは私達にどのような経験を共有させ、また何を気付かせてくれるのでしょうか。耳からダイレクトに入り込み聞く者の個々のノスタルジックな世界へと侵食していくフィリップスの世界は、視覚に訴えるビジュアルアートに慣れてしまった私達に新鮮な驚きを与えてくれることでしょう。