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ジュン・グエン=ハツシバ「The Ground, the Root, and the Air (グラウンド、ルーツ、エアー)」(TOKYO)

2007年09月01日(土) - 10月06日(土)

ジュン・グエン=ハツシバによる4度目となる個展「The Ground, the Root, and the Air(グラウンド、ルーツ、エアー)」を開催いたします。


 


ジュン・グエン=ハツシバは1968年東京にて日本人の母とベトナム人の父の間に生まれ、幼少時代を日本で過ごしました。その後アメリカへ渡りMaryland Institute, College of Art, Mount Royal School of Artにて修士号を取得。現在はベトナムに戻り、ホーチミン市を拠点に制作活動を行っています。社会の中の少数派や不運な境遇にある人々、歴史によって生み出された難民などの物語を作品の題材に取り上げ、特に“メモリアルプロジェクト”シリーズによって一躍有名になりました。


 


本展は日本初公開の2作品を中心に構成され、2Fと5Fの 2会場で発表いたします。 


 


” Breathing is Free: 12,756.3″と名づけられたプロジェクトは一連の“メモリアルプロジェクト”の最新作となるもので、この数字は地球の直径つまり地球の反対側にいくための最短距離を示しています。作家自らが世界の様々な都市を走り、少しずつ距離を重ねて実際この距離に達するまで、現在のペースから推測すると約6年を要します。ハツシバは「逃げたり非業の死を遂げたりしなければならなかった難民たちへの僕なりの思いであり、供げものなのです。 、、、僕が考えるに現状から逃げようとしている難民たちの願いでもある。彼らも現状とは正反対の環境に行きたいのです。」と語ります。


 


このプロジェクトは2007年春に、歴史的に様々な和平会談が行われたスイスのジュネーブから開始しました。しかし現在でも世界中に多くの難民が存在し、悪化の一途をたどっているのが事実です。プロジェクトが進むにつれて、作家自身の体験より歴史に埋もれてきた多くの物語が展開することでしょう。


 


本展ではランニングプロジェクトの第1章として、GPSを介し作家が実際に走ることによって描かれた「地球のドローイング」、ビデオ作品を展示いたします。作家の走った痕跡は地図上でみると花の形を描いています。「花というのは様々な感情や観念を想起させます。死、愛、幸福、喜び、ロマンス、悲劇、不安、友情、神秘、、、花によって私たちの思いを共有したいのです。」このように花はプロジェクトの重要なテーマとして使われています。


 


“The Ground, the Root, and the Air: The Passing of the Bodhi Tree(グラウンド、ルーツ、エアー:菩提樹を通り過ぎながら)”というビデオ作品は、”The Quiet in the Land”プロジェクトの第3回目(NYを拠点に活動するキュレーターFrance Molinによって1995年より開始)として企画された地域密着型のアートプロジェクトです。Luang Prabang School of Fine Arts50人の学生の協力を経て、2004年から2006年にかけてラオスのルアンパバンにて制作されました。


 


このビデオ作品では、伝統的価値体系や遺産が薄れゆく中での個々人の成功への野心や発展途上国特有のグローバリゼーションによる経済発展を描いています。中国、タイなど近隣諸国の国際市場に影響され、仏教に根付いた静かなラオス社会はその古くから変わらないメコン川の流れの中で、もがき苦しんでいます。競技場、ランタン、メコン河、そして菩提樹を現在の混沌としたラオス社会のシンボルとして描き出し、急速に発展する社会への不安や希望を暗示しています。


 


海外を中心に精力的に活動しているハツシバの当ギャラリーでの5年ぶりの個展を是非御覧下さい。また現在開催中のMuseum of Art Lucerne(スイス、ルツェルン市)での個展(~8月26日まで)は来年2月よりイギリスのマンチェスターアートギャラリーに巡回いたします。