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木村了子展「楽園」(TOKYO)

2011年05月11日(水) - 06月04日(土)

2011年5月11日(水)より、ミヅマ・アクションにて木村了子展「楽園」を開催致します。

近年、ミヅマ北京の個展や国内外のグループ展参加で注目を集めてきた木村。国内での満を持しての発表となります。

木村了子は1971年京都生まれ。97年東京藝術大学大学院壁画専攻を修了いたしました。

大学で油画を学んだ木村は、中世の宗教画などをヒントとしたステンドグラスを制作する傍ら、2003年頃より本格的に日本画を始めました。

西洋の王子様やターザン、人魚などファンタジーな人物像が東洋画の風景表現の中を踊る作品は、屏風や掛軸を舞台に表されます。


木村は古典作品に見受けられる「堅実な構成の中にも、画面全体がゆったりとして、どこか破綻寸前のラフ(乱暴)さがある」作風に惹かれると言います。

時に生活の一コマを切り取ったスナップ写真のような一見茫洋とした一面を持つ木村の作品は、古典の表現の入念な構成と確かな描写技術の吸収を前提に展開されていて、この趣味が全ての作品に通底しています。

「破綻寸前」であるという、この矛盾しているかのような構成の緊張はまた、画家のユーモアを望む感性と融合し他に見ない独特の絵画世界を作り上げます。

そして、人物をモチーフとする木村は男性、中でも少年か青年かあやふやな時期の「男子」を描きます。かねてから美術史上に、女性から男性への性愛を主題とした作品が少ないことに疑問を抱いていた木村。他者から見られることを強く意識する現代男子の表現に「今の日本画」を描く可能性を感じました。


「楽園」と題された本展。一対:各2×4mの新作屏風で、木村は女性である自身が密かに夢想し楽しむ男子のエロティシズムを、描き手の情念を制したカラッとした態度で洒脱に表しています。一方、描き込まれた男子たちの日常的なポーズと視線から見せるナルシズムの表情は、アイドルのグラビア写真の判を押したような軽さを持ちつつ、ふとした瞬間に思い出される粘着性を伝えています。現代の情報時代の中で私たちが気にも留めずに受容している彼らの一様な広告的イメージ。麻薬のようにカジュアルでありながら抜け出せなくなる表情を木村は迷いのない筆で描き写しています。

客観的立場で対象とあえて距離を置きつつも男子への性愛を表現する、そんなドライとウェットが絶妙に交錯した視点によって、そこから見える物事の本質に迫ります。

ファインアートの世界では独特の作品性は、木村了子があえて自身の作品を「破綻寸前」の臨界点に近づけ、美術史の継承と発展を目指す挑戦とも言えます。

ユーモア混じりの表現の裏にある画家の戦いの記録を是非ご覧いただきたく、お願い申し上げます。