O JUN展「夢見る、さんの丞」(TOKYO)
2013年04月03日(水) - 05月18日(土)
4月3日(水)より、O JUNの3年ぶりとなる個展「夢見る、さんの丞」を開催いたします。
2010年春に開催した「O JUNの山」以降、数々の展覧会に参加し、精力的に活動をしてきたO JUNですが、今年は本展をはじめ、4月13日(土)からは下山芸術の森 発電所美術館(富山)での西島直紀氏との二人展、12月から来年にかけては府中市美術館での個展の開催も決定しており、円熟味を増すO JUNの充実した作家活動を象徴する一年となりそうです。
明るい色や明確な線によってリズミカルに描かれ、観る側に絵画のユーモアや自由さを与えてくれるO JUNの作品。
一方で、《匍匐》する少女の生々しい指先のように、一瞬で、リアルな視界へ観る側を引き込む、不安定さや二面性を持っています。
残された余白や画面に盛られた厚い絵具、一見走り書きのような筆のストロークなど、完成した絵には「描く」という行為が痕跡としてくっきりと残り、描くこと(行為)と絵(物)の境界が曖昧なこともまた、観る側が感じる揺らめきの一因かもしれません。
そんな私たちの憶測とは別に、O JUNは描いた絵について、<描かれた絵はどれもぼくなどに見向きもせずさっさと光の中に行ってしまう。同時に、ああ、「絵」なんだな、と思うのだ。そしておそらく、その時が自分は光を失って本当に暗い場所にいるの だと思う>と言います。作品が持つはっとするような明るさや強度は、暗闇から発せられるからこそ、よりその本質が画面に現れ、眼裏(まなうら)に深く残るのではないでしょうか。
実際の事件や出来事をテーマに作品を制作することが多いO JUNですが、今回も彼の記憶に深く残っていた、ある出来事がきっかけとなっています。タイトルにある「さんの丞」とは、美術批評家のN氏が最晩年に見た夢の中の人物。病人であったN氏の枕元に現れては外に連れ出し、地下の暗く野蛮な酒場に引き込んだといいます。
さて、さんの丞― 暗闇の番人(たち)はいったいどんな夢を見るのでしょうか。
観る者を揺るがせ、煙に巻く、謎多きO JUNの作品をお楽しみください。
今回は、紙と鉄フレーム、キャンバスの作品を大中小と異なるサイズで制作し、組作品のスタイルで展示いたします。
〈作家コメントより〉
2006年に3点の絵を描いて展覧会をやって、その翌年にそれを加えて個展をしたが、今回もその時の経緯と状況に似ている。去年から絵をポロポロ描いてはあちこちで漏れこぼすように展示している。この個展ではもう少し大きな絵も予定している。でも、まだ終わらない。全然足りない。もっともっとぼく自身が真っ暗になるまで描かなくては、と思う。Nさんの夢に出てきた”さんの丞”は腰も口も軽くて調子がよい上に信用もおけない。Nさんを誘い出しては悪所に連れて行ってそのままどこかへ姿をくらましてしまう。性懲りもなくまた現れてはNさんを誘い出す。Nさんはその都度闇の世界から命辛々脱出してくるはめになる。さんの丞は心底悪人だ。そんな悪人が見る夢はどんな夢だろう。いや、”こう暗くては、夢も見えねえ…。”お後がよろしいようで…。