20年以上もの間、一貫して昆虫をモチーフとして描かれる筒井の作品は、極めて抽象的でもありますが、少しの想像力を働かせることでまた違った何かに見えたりもします。それについて筒井は「モチーフ自体が何にも見えないよりも、さらに別の何かに見えれば、よりその意味を失って作品が自立していくのではないか」と言います。
それは、筒井康隆氏が『聖痕』について語った「実験的に枕詞を含む古語を多用し、今は使われていない言葉の復権と、それによる新たな表現を探った」という言葉に呼応して、内容に沿った「挿画」という側面だけではなく、一枚一枚を「絵画」として自立させることで、美術史の流れを汲んだ上で抽象絵画を描き続ける、筒井自身の表現に対する姿勢がみてとれます。
筒井伸輔展(TOKYO)
2014年04月30日(水) - 05月31日(土)
ミヅマアートギャラリーでは4月30日(水)より筒井伸輔展を開催いたします。
2012年7月より8ヶ月に渡って朝日新聞に連載された筒井康隆氏の『聖痕』。その挿画として描かれた全原画を一堂に公開します。
12.3×16.5センチの小さな紙に描かれた作品は、幾段階もの工程を経て描かれます。
まず、身近で採取した虫の死骸を標本にし、顕微鏡写真を投影して型紙を作ります。ガラス板の上に乗せた型紙を一片ずつ外し、パズルをうめていくようにオイルパステルを溶かしたロウを流し込んでいきます。全ての型紙が外され、ガラス板に現れたロウの色面をナイフで削り、紙の上に乗せて下から熱を加えると、染み込んだロウが紙に定着し、図像を結びます。
父・康隆氏の言葉から要素を紡いで筒井が描いた抽象画から、また別の物語を紐解いていく、そこには自由で無限の想像が広がっていくことでしょう。
初めての父子共演となり話題を呼んだ連載小説から生まれた、238枚の世界を是非ご高覧ください。
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