堀浩哉展「触れながら開いて」(TOKYO)
2021年02月24日(水) - 03月27日(土)
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※ 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、本展は1時間ごとに定員12名の枠を設けたアポイント制での開廊とさせていただきます。
ただし、定員に達していない時間帯は予約なしでの当日鑑賞が受付可能です。
ご来廊の際には、オンラインによる事前予約をお願いいたします。(予約開始は展覧会の数日前を予定しております。)
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https://airrsv.net/mizumaartgallery/calendar
状況に応じて開廊方法などに変更がある場合には、随時ホームページ等で情報を更新いたします。皆様にはご不便おかけしますが、ご理解、ご協力をお願いいたします。
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ミヅマアートギャラリーでは、2月24日(水)より堀浩哉展「触れながら開いて」を開催いたします。
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コロナ禍の自粛と自問の日々の中で、自分に残された時間の限りをも意識しつつ、作業場と倉庫を見渡し始めた。
大量の「もの」たち。作品や作品未満のこの「もの」たちの末路は、結局は資本制下の「生産」システムからはみ出した不用なものとして捨てさられるしかないのか、という思いにかられながら。
しかし改めてそのいくつかを、対峙するようにして見直していくと、そこで蘇ってきたのは「生産」された「もの」という物質性を超えて、ぼくが膨大な量の「線」を刻み続けてきた、その「時間」の「記憶」だった。
例えば、こんな言葉を付して制作した300点を超えるドローイングのシリーズを見直している時にー
「ドローイングの線は、身体の記憶だ。その線が、記憶が、どんどん分節化してくる。記憶の中の無数の傷のように、傷が線として刻まれる。(略)すでに総体としての世界は消されてしまった。ぼくらはその断念の内側で生きている。けれども、ぼく(ら)は世界への欲望を捨て去ることはできない。一気には観えない総体への欲望は、だから無限に分節化していく。分節化こそが、世界への、そして絵画への欲望の証のように」(2005年「水面に照らし返された世界(の傷)」シリーズ)
その「傷」でもある「線」を刻む(ように描いた)際の、深層に強く残っている「触覚」そのものが、ありありと蘇ってきたのだ。そうだ、ぼくはここから来て、今なおここにいる。
自粛という期間は、そんな自己確認の機会でもあった。
この確かな「触覚」を手がかりに「線」と「触れ」ながら、しかし本格的な分断の時代の今だからこそ、「線」が分節化の先でもう一度、「繋がる」空間に向かおう。
堀浩哉
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堀浩哉の美術家としての活動は半世紀を超えました。
キャンバスや和紙に墨や岩絵具、クレヨン、アクリルなど様々な素材を用い、日本画、洋画というジャンルを超えて描いてきた堀の絵画は、その時代ごとにテーマやコンポジション、色彩は変わっても、彼が生み出す「線」の力強さやしなやかさはいつも画面を豊かに構成してきました。それは、「堀浩哉+堀えりぜ」のユニットによるパフォーマンスにもみられる身体性を含んだ堀独自の描きによるものと言えるでしょう。
多くの人々がそうであったように、パンデミックによる外出自粛は堀の日常も変えました。
アトリエの中で過去の作品と向き合う(向き合わざるを得ない)日々の中で、何度も描いてきたその線を、堀が「傷」と再確認したのは、時が経っても線を引いた時の「触覚」が彼の中で古傷のように身体に蘇ってきたからだと言います。
「そうだ、ぼくはここから来て、今なおここにいる。」という自覚。
堀は今回、かつて描いた作品の上に新たな下地の和紙を貼り、まったく違う絵画を描くという方法を一部の作品に行いました。かつての線の上に新たな線を重ねるのではなく、ゼロからリセットして描くことで、前向きな気持ちになれたと言います。タブーともいえそうな行為ではある一方で、それほどの切実さと振り切る強さを持つことが、今は必要だったのかもしれません。
「触れながら開いて」というタイトルもまた、この新たな世界に再び立ち向かう決意と言えるでしょう。
フィジカルから遠く離れた今、私たちがそれでも「触覚」に焦がれるのはきっとその感覚を身体の底で覚えているからーその気づきを堀の作品に感じ取ることができるのではないでしょうか。ぜひ堀浩哉の現在進行形の新作をご高覧いただけましたら幸いです。
また、神楽坂の√K Contemporaryにて、初期から近作によって構成される「堀浩哉 回顧展」(2月13日〜 3月6日)、及びインスタレーション「堀浩哉+堀えりぜ 記憶するためにーわたしはだれ?」(√K Contemporary地下「Space √K」、2月13日〜3月26日)が同時期に特別開催されます。
堀の初期から新作までを包括する、これまでにない機会ですのでぜひ合わせてご高覧ください。