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新津保 建秀展「消え入りそうなほど 細かくて 微妙な」(TOKYO)

2023年04月19日(水) - 05月20日(土)

ミヅマアートギャラリーでは、4月19日(水)から、新津保建秀展「消え入りそうなほど 細かくて 微妙な」を開催いたします。


1968年東京生まれの新津保建秀は、映像制作をきっかけに独学で写真を習得し、ポートレートや風景、建築写真など数多くの仕事で活躍してきました。透明感のある独特の写真が多くの支持を得ている作家です。


その一方で、東日本大震災の直後より雑誌『思想地図β』(ゲンロン)と行った東北地方やウクライナでのドキュメンタリー撮影(2011-2013)をはじめ、さまざまな異なる分野の人たちとの協働によるプロジェクトにも携わっています。最近では複雑系科学・人工生命の研究者である池上高志氏、音楽家のevala氏らと共に体験型VRのインスタレーション作品に取り組むなど、その表現の幅を広げています。


また、写真家のキャリアと並行して、美術を研究するなかで、それまで取り組んでいた「風景」という対象と身体性について再考するなど、よりしなやかな眼差しを掴んできました。本展は新作を含むこの数年間の活動を凝縮した展覧会となります。


 


諏訪で見た焚き火、熊本の震災後に土砂崩れによってできた滝や逢魔時に見た空とそれを映す水面、そしてPhantomという名の超高速度カメラで捉えた火のゆらめきなど、今回展示する作品におさめられた風景や被写体はどこか異形で、⾒知らぬ風情を纏っています。新津保にとってもそれは何かもやっとしたもの、微かなものを掴むような感覚だったと⾔います。


 


新津保は自身の写真について、「被写体と対峙した際に、向こうとこちらの間を行き来し生まれる主観的な時間のなかで、微かに立ち上がる、目に見えないフォルムを眼差しているように感じる」と表現しています。それは現前と不在の間の儚くうつろうものを写真に留めるような感触に近いかもしれません。


普段、人物を撮影する際には、背後にある風景を人物に「被せる」ように撮る、という新津保ですが、今回は風景や被写体に人のような存在や気配を見出すとともに、図らずもそこに反応する自身の意識が被さります。実際にその写真からは、被写体を⽬の当たりにし反応する新津保の⾝体や⼼の機微、目には見えない「何か」の手触りを感じることができるでしょう。


 


最後に、本展のタイトル「消え入りそうなほど 細かくて 微妙な」とは、人工知能との対話において出てきた言葉とのこと。人間とは異なる存在から発せられたこの言葉は、ぎこちなくも新津保の写真を的確に示しているようにも感じます。ぜひ本展をご高覧いただけましたら幸いです。


 


新津保建秀 (しんつぼ けんしゅう)


1968年東京生まれ。2020年東京藝術大学大学院美術研究科油画修了。博士(美術)。主な作品集に、池上高志氏との共作『Rugged TimeScape』(FOIL、2010年)、『Spring Ephemeral』(FOIL、2011年)、『\風景』(角川書店、2012年)など。関連書籍に『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1』(ゲンロン)など。近年の展覧会に、2022年「八甲田大学校」(国際芸術センター青森)、個展「往還の風景」(ART DRUG CENTER、宮城)などがある。


 


 


《関連イベント》


4月26日(水)19時〜 新津保建秀×下西風澄 氏(哲学者)トークイベント


定員:30名(先着順)


予約不要、参加無料


 


下西風澄(しもにし かぜと)


1986年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。哲学に関する講義・執筆活動を行っている。論文に「フッサールの表象概念の多様性と機能」(『現象学年報』)ほか。執筆に「生まれ消える心─傷・データ・過去」(『新潮』)、詩「ねむの木の祈り」(『ユリイカ』)、絵本『10才のころ、ぼくは考えた。』(福音館書店)など。2022年12月に、初の単著『生成と消滅の精神史 終わらない心を生きる』(文藝春秋)を刊行。


https://kazeto.jp/