O JUNキュレーション展「🟥幸福🟨惨憺🟩世界⬛️:Dat+石井佑果+山脇紘資+O JUN」(TOKYO)
2024年04月10日(水) - 05月18日(土)
ミヅマアートギャラリーでは、4月10日(水)より、O JUNキュレーションによる展覧会「幸福惨憺世界:Dat+石井佑果+山脇紘資+O JUN」を開催いたします。
本展は3人の画家と、1人のブレイクダンサーによる異例のグループ展です。
3人の画家たちは師弟であり、また「絵」と真剣に向き合ってきた同志としてそれぞれ活動しています。ブレイクダンサーのDatは身体そのものが支持体であり、彼らとは異なる表現方法で歩んできました。
ギャラリーの空間で展開される、彼らの<幸福と惨憺たる世界>をぜひ体感いただけましたら幸いです。
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幸福と惨憺たる世界
昨年秋、ギャラリーからグループショーのキュレーションを依頼された。若いアーティストたちでと思ったのだが“お前も入れて”ということでこのメンツで臨むことにした。
石井佑果、山脇紘資、Dat、O JUN。画家が3人、ブレイクダンスが1人、Datだ。ミヅマの空間でこの4人が作品を展示する。
石井佑果の絵がどこか見覚えがあるのは、ヨーロッパ古典絵画に描き込まれている動植物や背景としての風景、装飾柄、楽譜、あるいは画中画などのイメージを引用しているからだ。複数のイメージがカンバス上で組み合わされ、あるいは隣接して並置されている。それらが接続されることで各々のイメージは突然中断されて個々の意味は宙吊りにされるのだが、そのような画面上の構成はイメージの再編集を目論む上でふつうに今日的で常套的な技法だ。興味深いことは、カンバス上に描かれた事物同士の接合部は彩度と筆触を均さず境界をつくっているのにごく自然に全体のけしきが開けて見えることだ。画面上に複数のイメージの接合により生じた齟齬やズレがたちどころに縫合されたかのように新たな表層が覆い隠してしまう。石井佑果の絵を前にしたときに見せられているのは違和感や差異ではなく、不思議な蘇生力と統合性だ。のどかに、しかし見忘れていたことや既知を別な視覚に変換させる力を宿している。
山脇紘資は動物の顔を正面から描く。ほぼ画面全体を覆う体毛の筆触は幾層にも撫で重ね描きおこされる。その毛並みは、濡れた路面に張るガソリン油膜のようなグラデーションを見せる。頭部左右同線上に並ぶ二つの光点は両眼だ。描かれる姿も造作も識別しながら狼も山羊も鳥もどれもとても均等に不自然だ。自らの欲望と意志と行為による撹拌の末に生成されてゆく画家の技法と様式は、再現、擬人、鏡像のそれぞれをイメージ上で実現させ得るが、それら作為的で不自然な反映や表出をも”人”の自然性の内にあって機動することを山脇の描く動物の目は見据えている。以前、彼の個展会場で山羊の首の絵の前に立って見ていたのだが私はどうにも落ち着かない気持ちになったことがあった。山羊の眼差しは私を見ていない。私を貫通しているように思えた。振り向くと背後の壁にも動物の絵が掛かっている。合わせ鏡の間に迷い込んだ私は二頭の視線に貫かれ居た堪れなくなって早々に会場を出た。絵と見る者の間に仕掛けられたワナにはまった私の稀なる鑑賞体験ということだろう。
今回の展示は絵画と他のメディウムの参加を考えていた。当初、彫刻やインスタレーションなどを考えてみたのだがどうもしっくり来なかった。或る時不意に、ブレークダンスだと思った。その時点で突然の思いつきは、他のいくつもの案を一蹴した。認知科学の研究者である清水大地氏に相談したら、それならこの人ですと紹介されたのがDatである。氏もブレイクダンスをしているのだがDatは氏のダンス仲間でありながら長期に渡り観察し考察を続けている研究対象でもある。私はイベント的な参加ではなく、展覧会の参加アーティストとして彼にお願いをした。最初に映像で彼のダンスを見たのだが、生活感のあるそれも狭い部屋の中で、かけている音楽もあまりそれらしくないリズムが流れるなかで踊るDatの動きは(他と比較するほど知らない世界に対する私の経験の浅さにもよるのだろうが)、それにしてもどこか奇妙で異様であった。彼はまた、自分のダンスや身の使い方に対してとても触覚的視覚的によく話す人だ。しかしその言葉に”返し”のようなものがあって強い言葉ではないのだが刺さると容易に抜けない。お前はどうなのか?とやられる。
ぼくはとにかくからだがかたいんです、と言って笑う。ダンサーなのに…?。ダンスの最中、彼は何を見ているのだろう?踊り出してから終始のたうち這い回る床だろうか、そのつど半身が臨む天だろうか?私たちはどちらも見落としたまま、ただ彼の刻々の揺れ動きを見ることになるだろう。
この夏、公式種目となったパリ・オリンピックの場で活躍するであろうB-BoyたちとDatはどこかが決定的に違う、そんな気がする。
私は新旧4点の絵を展示しようと思っている。
自分の描く絵(描いた絵)でそれぞれ三人に与太者みたくからんでみようと思っている。
展覧会タイトルは
🟥幸福🟨惨憺🟩世界⬛️
読めばおわかりのごとく私たちの今生であり現状そのものだ。同時にこの四人の制作や表現の現在でもある。
人と人以外のモノが混ざり合う編集のきかないヒト世界、モノ世界の一隅を照らしてみたい。このshowをあなたに見ていただきたい。
O JUN
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【プロフィール】
石井佑果
1995年香川県生まれ。2022年東京藝術大学大学院美術研究科絵画学科油画専攻修了。 現在は東京を拠点に活動。近年の主な展覧会に「大逆走」(2024年・same gallery・東京)、「AMATEUR vol.2」(2024年・h beauty&youth・東京)、「厚地朋子/石井佑果 3㎝と3km -対岸を眺める-」(2023年・TEZUKAYAMA GALLERY・大阪)、「2人展:塩原有佳、石井佑果」(2022年・Satoko Oe Contemporary・東京)、「石井佑果・丸山太郎 ENCOUNTER」(2022年・三越コンテンポラリーギャラリー・東京)、「長文風速計」(2022年・アキバタマビ21・東京)、「あっけらかんの眺め」(2021年・KOMAGOME 1-14 cas・東京)など。
Instagram https://www.instagram.com/yuuuka141/
山脇紘資
1985年千葉県生まれ。東京在住。2012年 武蔵野美術大学油絵学科卒業 2014年 東京芸術大学院美術研究科絵画専攻第七研究室修了。近年の主な展覧会に「巡り来る自己:F collection の一瞥」(2024年 N&A Art SITE、東京)、個展「Halo」(2023年 FOAM CONTEMPORARY、東京)、個展「GRACE」(HIRO OKAMOTO、東京)、「WHAT CAFE × WHYNOT.TOKYO EXHIBITION」(2022年 WHAT CAFÉ、東京)、「estate」(2021年 ZEIT-FOTO kunitachi、東京)、個展「twin animals」(2021年 KITTE、東京)など。
https://linktr.ee/kosuke.yamawaki
Dat
1990年8月3日に埼玉県で生まれる。元々体が弱く、特に呼吸器官が弱かったため3歳から水泳を始める。小学生の時に友人に誘われて5年生から柔道を始める。
中高と突発的に未経験のバスケを始める、が、高校2年生の時に友人にブレイクダンスに誘われてブレイクダンスに出会う。当時部活の友人達のバスケに対する姿勢に嫌悪感を抱いており、先生の指示なく自分達で頑張るダンスを始めた友人に感銘を受け、ここからドップリダンスにハマる。
大学に入るもダンスサークルが無かったため、地元の駅でたまたま出会ったダンサー達と意気投合しダンスに明け暮れる、ストリートダンスのカルチャーや日本のダンスシーンに触れる。
24歳で池袋に上京し、1人でいる時間にダンスと向き合う時間がとても増える、自分のスタイルをこの頃から見つめ直す。
誰かになりたい、何かになりたい、ではなく自分に出来ること、自分にしか出来ないことにフォーカスし始める、28歳ぐらいの時に世界大会に日本代表として招待された際、特に自分のルーツに向き合い水泳や柔道の体の使い方も取り入れ、より自分と向かい合う。
自分のやりたい表現をブレイクダンスを使って表現する、フレッシュとロジカルをテーマに躍るBboyです。
O JUN
1956年東京都生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了。
人物やもの、風景といった日常のありふれたモチーフを、油彩、鉛筆、クレヨン、顔料、水彩など様々な画材を用い、独自の描きで見慣れぬ世界を作り出す。
主な展覧会に「O JUN 描く児」(2013年 府中市美術館、東京)、「O JUN 展 まんまんちゃん、あん」(2016年 国際芸術センター青森)、「O JUN × 棚田康司展 鬩(せめぐ)」(2017年 伊丹市立美術館、兵庫)、「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」(2022年 森美術館、東京)、「象印 O JUN×森淳一」(2022-23年 ミヅマアートギャラリー、東京)、個展「絵と縁」(2023-24年 優美堂、東京)、など。
《イベント》
1. Dat ブレイクダンス
5月1日(水)18:00頃より
2. Dat ブレイクダンス+幸福惨憺世界トーク
5月18日(土)16:00〜Datブレイクダンス / 17:30〜19:00 トークイベント
(いずれも参加無料、先着順)