金子富之展「須佐之男(すさのお)の息吹き」(TOKYO)
2026年04月22日(水) - 05月23日(土)
ミヅマアートギャラリーでは 4月22日(水)より金子富之展「須佐之男(すさのお)の息吹き」を開催いたします。本展では日本神話の荒ぶる神、須佐之男を主題に、ギャラリーの壁を覆い尽くす460×640cmの巨大な絵画作品三点を中心に、絵付けを施した石や面、達磨を含む十数点の中小品と合わせ発表します。
混乱と加速の時代に、制御不能な力と私たちはいかに向かい合うことができるのでしょうか。荒ぶる力と拓き鎮める力、相反する二重性は古来より神々の姿を通して語られてきました。金子は加速する都市の喧騒から距離を置くように山形の限界集落に居を構え、土地に残る信仰や畏怖の痕跡を探りながら、神仏や精霊、妖怪といった目に見えない精神的な存在の実体化を試みてきました。
2023年の個展「辟邪神(へきじゃしん)」では邪を払う力強い神々を主題に据え、《牛頭天王》をはじめとする大作を発表しました。疫病をもたらす恐ろしい行疫神でありながら、同時にその強大な力で疫病を抑え込む辟邪神としての側面も持つ、善悪互転の構造を持つ神々。力の表現を追求する金子が本展で挑むのは、神仏習合により牛頭天王とも同一視され、日本神話における猛々しく荒ぶる力の象徴ともいえる神、須佐之男です。この神の名を拠り所とし、派生と習合により織りなされた畏怖と信仰に向き合う中から三点の作品が生み出されました。
勇猛、勢い、速さを意味する「建速(たけはや)」がその神性を示す《建速須佐之男》は帯刀した武の神として描かれ、全身に力をみなぎらせながらも剣禅一如の究極の様相を呈しています。祇園精舎の守護神《祇園大明神》は牛頭天王を起源とし、忿怒相で羂索(投縄)と斧を力強く握り、魔除けの赤でその威を示します。《日月蛇頭黄幡神(おうばんしん)》は古代インドの占星術、九曜のひとつ羅睺(らごう)を祀ったものです。インド神話で太陽を呑み込む蛇神ラーフを原型とし、日本では岩戸隠れの神話と重なり、須佐之男と結びつき習合しました。
異文化間で重なり、翻案された畏怖と信仰の交点である神「須佐之男」は、いずれも荒れ狂う恐ろしい力と拓き鎮める力の二重性を持ち、根源的な力の象徴として古くから祀られてきました。ギャラリー空間を囲むこれらの力の顕現は、荒ぶる神の息吹を現代へと呼び込みます。災害や疫病、戦争など、私たちは有史以来何度も社会の様相を変える理不尽に大きな力に直面してきました。時代と共に解釈を重ねながら未来へと受け継がれる神話。その流れの中に今、力強く放たれた三点の巨大絵画と、ぜひ会場で対峙してください。

