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ヘリ・ドノ展「HERIDONOLOGY」(TOKYO)

2016年09月21日(水) - 10月22日(土)

インドネシアの現代美術界で最も重要な作家の一人であるヘリ・ドノは、過去30年の名高いキャリアを経て、広く国際的な評価を得てきました。2015年のヴェネツィア・ビエンナーレでは、トロイの木馬とインドネシアの絶滅危惧種であるコモドオオトカゲとを掛け合わせた様相を持つ戦車の巨大インスタレーション《Voyage Trokomod》でインドネシア館を占領し、その年の目玉の一つとなりました。今日に至るまでヘリ・ドノは世界中で数多くの展覧会に参加しており、また、Prince Claus Fund Award 1998、UNESCO Prize 2000やインドネシア政府によるAnugerah Adhikarya Rupa 2014(インドネシアン・アート・アワード)などを数多く受賞しています。  


 


本展「HERIDONOLOGY」では、ヘリ・ドノの絵画、キネティックスカルプチャー、インスタレーションやパフォーマンスにみられる独特の視覚言語や物語を構成する、今までに彼が受けた影響やテーマを扱っています。ヘリ・ドノはインドネシアの伝統的芸術様式の要素を作品に取り入れることで知られており、そこには、古来の口承文学の表現方法と当代の表現方法とを融合するため、その道のプロに師事した影絵芝居、ワヤン・クリの伝統的な表現も含まれています。  


 


躍動感にあふれ、人々を惹きつけるヘリ・ドノの作品には、作家の政治的取り組みも同居しています。1960年にスハルト体制下にあったジャカルタで生まれたヘリ・ドノの個人的な経験は、彼の作品に内在する社会批判性に大きな影響を及ぼしました。その意味では、彼の作品に登場する空想上の怪物、獣やその他のキャラクターは、権力の象徴に対する破壊分子的な比喩であるといえるかもしれません。軍事介入、環境破壊、そして汚職などが、ヘリ・ドノのブラックユーモアに満ちた物語の不条理主義的な風景に表れています。  


 


1992年に東京芸術劇場ギャラリーで開催されたグループ展「美術前線北上中―東南アジアのニュー・アート」を皮切りに、ヘリ・ドノと日本との関係は長きにわたります。この展覧会はその後、福岡、広島、大阪へと巡回しました。以降、国内のいたるところで数多くの展覧会に参加しています。ミヅマアートギャラリーでの本展は絵画と主要な3点の彫刻で構成され、ヘリ・ドノの日本で3度目の個展になります。 現代の政治風刺とジャワの伝統とが共存し、ユーモアと物語的手法で、観る者の意識を私たちが省みるべき根本的な課題に向けさせるHERIDONOLOGYの科学への探求をぜひお楽しみください。