近藤聡乃「てんとう虫のおとむらい」(TOKYO)
2006年07月05日(水) - 08月08日(火)
近藤聡乃の初の個展となる「てんとう虫のおとむらい」を開催します。1980年生まれの近藤聡乃は2000年マンガ「小林加代子」で第2回アックス新人賞奨励賞(青林工藝舎)を受賞し、2002年アニメーション「電車かもしれない」でインパクトの強い知久寿焼(元たま)の曲に合わせてリズミカルに踊る少女の作品でNHKデジタルスタジアム、アニメーション部門グランプリを獲得し、国内外で注目されている若手作家の一人です。
今回の展覧会タイトル「てんとう虫のおとむらい」は、新作アニメーションのタイトルにもなっています。大学の卒業制作として発表した同タイトルのアニメーション作品に納得がいかなかったことから、再度挑戦したこの作品は「2匹のてんとう虫を打ち殺してしまう」という出来事から始まります。「胸元のボタンがてんとう虫にみえてしまう」ほどに膨れ上がった罪悪感と、「今、どこかここではない場所に何人も自分が存在しているような気がする」という不安。繰り返しおしよせる罪悪感と不安の悪夢の中で、少女はスカートの内側に何百ものボタンを縫い付けていきます。この少女は「英子(エイコ)」と名付けられ、マンガ、ドローイングなど作家の全ての作品にわたって作家にとっての理想の少女として登場しています。水中でまどろむ英子やてんとう虫が絡み合い流れ出るどろどろした粘液など、思春期の少女の心理が英子を通して暗示的に描かれています。
「みんなのうた」でよくみていた「メトロポリタン美術館」が怖かったけれど何度もみてしまったこと。小さい頃に繰り返しみた悪夢があったこと。てんとう虫の足の節から出る黄色い液体がとても苦かったこと。てんとう虫が手から地面に落ちた瞬間、車に轢かれて死んだ事。このように小さい頃には怖くてたまらなかった“悪夢”が、大人となった今では懐かしく美しいものとして思い出されることに気付き、制作されました。このアニメーションを通じて、忘れてしまったはずなのに皮膚感覚としてしっかり記憶している悪夢のように、懐かしいけれど不安な現実と妄想のはざ間を体感していただけるのではないでしょうか。
またアニメーションでは描ききれなかった様々な情景がドローイング作品として展示されます。
不可視の記憶や幻想を不思議なリアルさをもって表現する近藤聡乃。小さい頃に誰もが体験した怖くて美しい感覚を再び呼び起こしてくれるそんな世界を是非お楽しみいただければと思います。