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森 淳一 展「山影」(TOKYO)

2018年10月24日(水) - 11月24日(土)

ミヅマアートギャラリーでは10月24日(水)より、森淳一展「山影(さんえい)」を開催いたします。


2014年の「tetany」以来4年ぶりの個展となる本展は、久々の発表となる石彫に加え、木彫、油彩、陶と多様性に満ちた作品群で構成されます。  


 


本展のタイトルでもある作品《山影》は、作家の故郷・長崎市の中心にある、金比羅山という山がモチーフとなっています。標高366mの穏やかな低山ですが、長崎の原爆投下時に多くの生死を分けた場所でもあります。 被爆者の中には、この山を越えて逃げようとし、山中で力尽きる人々が多くいました。一方、爆心地から山を挟んだ旧市街地では、原爆の爆風が遮られ、命を取り留めた人々もいたと言われています。  


 


今回森淳一は、黒大理石を素材にこの金比羅山の制作に取りかかりました。


制作の発端になったという、聖母子像の「ピエタ」。


なだらかな山の起伏が、キリストの亡骸を抱えたマリアが纏う布のドレープを連想させると同時に、森はその存在にピエタと似た神々しさを見出していました。さらに制作を進めるにつれ、俯瞰した石のドレープの下に、骨張った手足や、人間が蠢くような気配を感じとっていったと言います。


滑らかな黒い面の下の、壮絶な生と死、そして光と影。まさに現代のピエタと言えるかもしれません。  


 


この山の麓で生まれ育った作家にとって、石を彫り進めていく過程は、慣れ親しんだ山中に一歩一歩、足を踏み入れて行くような感触に近いものだったと言います。 歴史の影に光を当て、作家自身の過去を辿った本作は、森淳一の新たな代表作となるでしょう。ぜひご高覧を賜われましたら幸いです。