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青山悟展「The Lonely Labourer」

2019年10月02日(水) - 11月02日(土)

ミヅマアートギャラリーでは、10月2日より青山悟展「The Lonely Labourer」を開催いたします。


 


青山悟はイギリスの大学でテキスタイル・アートを専攻し、そこでシンガー社製の古いミシンに出会って以来、機械と人間の関わりや、時代によって変化する労働の在り方など、ミシンに纏わる言語を考察しながら刺繍作品を制作しています。


2年ぶりの個展となる本展では、刺繍と映像によるインスタレーションや、新たな試みであるシルクスクリーンに刺繍を施した作品、そして古い工業用ミシンによる制作で知られる作家にとって初の試みであるコンピューターミシンを用いた作品により構成されます。


 


《8HOURS》は19世紀のイギリスの実業家で社会改革者であったロバート・オーウェンによる有名なスローガン「仕事に8時間を、やりたいことに8時間を、休息に8時間を」に着想を得たインスタレーションです。1日8時間の労働を求めるこの運動は、メーデーの起源として広く知れ渡たり、現在に引き継がれています。しかしながらAIに代表される近年のテクノロジーの急激な発達は、労働の短縮のみならず労働自体も奪い、オーウェンが唱えた人間的な労働と生活の条件を変えうる可能性があります。青山はこのスローガンを現代の自分の状況に置き換え、実践を交えて考察します。


 


《News From Nowhere(Labour Day)》は前回の個展で発表した、19世紀の雑誌の挿画に刺繍を施した作品の延長にありますが、新たに取り入れたシルクスクリーンの技法により、大型の作品制作を可能にしました。本作は、19世紀のニューヨークで行われた「労働者の日」の風景に、近年世界で起こったデモや活動の旗と共に作家自身の活動のスローガンを謳った旗を加え、さらにインターネットから拾い上げられたアートや映画、音楽などのカルチャーを織り込んだ、現代の風刺画ともいえるものです。


 


本展のタイトルでもある《The Lonely Labourer》は、コンピューターミシンが全自動で刺繍する様子を映像に収めた作品です。映像の中で、コンピューターミシンは19世紀のアーツアンドクラフツ運動の創始者で、社会主義者でもあったウィリアム・モリスの手紙の文面を淡々と刺繍していきます。手紙の中から拾い上げられる「浪費」「個人」「階級」「競争」「利益」「富裕」「労働者」「仕事」などの言葉が、100年以上の時を経てコンピューターにより自動筆記される様は、機械による仕事を否定したモリスに対する皮肉のようでもあり、わたしたちが直面している労働に纏わる問題とその行方を端的に指摘する予言のようでもあります。


今回の作品を通して青山は「急速なテクノロジーの進歩と共に変容していく社会の中で、人間性の在り処、さらに美意識や芸術そのものの在り処は一体どこにあるのか?」という問いを提示するとともに、未来における労働のあり方と、作家本人の制作のこれからについても疑問を投げかけています。


美しく精巧な刺繍の奥に、風刺とユーモアを内包する青山悟の新作をぜひご高覧いただけましたら幸いです。