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近藤聡乃展「ニューヨークで考え中」

2023年07月05日(水) - 08月12日(土)

ミヅマアートギャラリーでは、7月5日(水)から近藤聡乃展「ニューヨークで考え中」を開催いたします。


 


近藤のニューヨークでの日々を綴ったコミックエッセイ「ニューヨークで考え中」(亜紀書房のウェブマガジン「あき地」にて連載中)は昨年で連載10年を迎えました。


 


本展は単行本『ニューヨークで考え中』第4巻の発売に合わせ、4巻収録のマンガ原稿とそれに関連したドローイングを中心とした展示になります。


 


コロナ禍の日常からはじまる4巻では、トランプ氏の2度目の大統領選挙、東日本大震災から10年、アメリカ同時多発テロから20年の節目を迎えたこと、ロシアのウクライナ侵攻開始などの社会的な出来事と、個人的な出来事(自宅での水漏れ事故の顛末、身内の手術、猫を飼い始めたことなど)が1エピソード見開き2ページで、等価に描かれています。


 


「タイトルで『考え中』と言っていますので、結論を出さなくて良いのがこの連載の気楽なところです。親しい人に近況を報告するような気持ちで、生活しながら、街を歩きながら、また街の片隅に座りながら考えたことを描いてきました。」と近藤は回想します。


 


連載を通してマンガの資料になりそうな写真を撮ることが習慣になったという近藤は、今回写真をトレースして線を起こし、そこにキャラクターとしての「自分」を描くという方法でドローイングを制作しました。ラフを原稿用紙にトレースしてマンガを描く近藤にとって、トレースは欠かせないマンガ制作工程の一つです。また「現在」を描くコミックエッセイにおいて、写真をなぞり線に置き変えるという過程を通して、画面上に現実と「考え中」の自分自身の両方を表すことができると作家は考えています。


 


「ニューヨークで考え中」の「傍の一コマ」として描かれたドローイングには、エピソードから派生した場面やその後を思わせる場面が描かれています。画面の隅に書き込まれているのは作家が実際にその光景を撮影した場所と年月日です。ドローイングはマンガに対し言葉が少ないことで、「考え中」の出来事を結論のないまま鑑賞者に委ね、鑑賞者自身がその日どこで何をしていたかを思い起こさせます。それぞれの日常を重ねてドローイングを眺める時、そこにまだ描かれていない情景が立ち現れることでしょう。


 


また会場のひとコーナーを使って、「ニューヨークで考え中」第二百五十一話でも触れられている構想中の新作アニメーション「呼ばれたことのない名前」のイメージスケッチをまとめて紹介いたします。「モノクロ+カラー1、2色」で制作された今までの作品群とは対照的に、色彩あふれるスケッチが壁面を覆います。これまで肌を紙の地色や白で表現することが多かった近藤ですが、長くニューヨークで暮らし、肌を「白」にしておくことに違和感を感じるようになったと言います。肌に色をのせたことで広がりをもちはじめた作品を通して、近藤のこれからについてもご期待いただけましたら幸いです。


ミヅマアートギャラリーでは10年ぶりとなる近藤聡乃展をぜひご高覧ください。


 


関連イベント


<対談 近藤聡乃 x 藤本由香里 氏(明治大学国際日本学部教授、マンガ研究家)>


7月8日(土)午後7時〜


定員:35名(要予約、参加無料)


*対談終了後、サイン会を行います。


※イベントのお申し込みは終了いたしました。


 


藤本由香里


熊本県生まれ、東京大学教養学科卒業。筑摩書房の編集者を経て、明治大国際日本学部教授。専門は漫画文化論・ジェンダー論。2015年4月~2016年9月までニューヨーク在住。2023年度も断続的に滞在予定。


著書に『私の居場所はどこにあるの?』(朝日文庫)、『少女まんが魂』(白泉社)、「近藤聡乃のからくり箱」(青土社、ユリイカ2021年3月号 特集=近藤聡乃)など。


角川武蔵野ミュージアムで開催中の「はじめてのBL展」(〜7月16日まで)の監修に尽力。


 


書籍情報


『ニューヨークで考え中』第4巻が亜紀書房より7月7日より発売予定。


出版に先駆けて、ミヅマアートギャラリーでは展覧会初日より先行販売いたします。


 


https://www.akishobo.com/akichi/kondoh/vol4


 


 


今回の展覧会を3Dウォークスルーでもお楽しみいただけます。


下記リンク先よりご覧ください。


 


https://my.matterport.com/show/?m=XXGDt6irxot