鴻池朋子 個展 「惑星はしばらく雪に覆われる」(TOKYO)
2006年10月25日(水) - 11月25日(土)
鴻池はこの1年間で巨大絵画の物語シリーズを完結し、アニメーションや彫刻、 さらにそれを取り巻く環境をも巧みに作品へと昇華するインスタレーション、また「Aランチ」というユニークなキュレーションなどを行い常に話題を集めてきました。 あらゆるメディアという玩具を使って、観客の想像力を軽々と飛越え、裏切り、また慣習に捕われない自由な宇宙の中で遊ぶ、 その力強い表現に目が離せない作家です。
本展では、そのような発表を続ける鴻池が、日々制作を営む際のまなざしの行方、思考の構造、イメージの所在、道具や技術などを、まるごと壮大な「地球断面図」にして表現します。鴻池の表現と地球は重力という絆を通して深い親和性があり、その起因を鴻池自身が探るというのです。 また、そこから生まれたイメージの一つであり、今春、大原美術館個展にて発表された3mの巨大な鏡の狼も同時展示されます。
現在私たちは先端の掘削技術を駆使しても、その地球の中へは地下12Kmまでしかアプローチできません。 地球のその殆どが常に謎に満ち溢れているのです。その、未だかつて誰も足を踏み入れたことがない未知の領域を、 鴻池が独自に紐解いてゆく、それが本展の見せ場となるでしょう。
今回 鴻池には“全球凍結図”という作品があります。それは人間や生命体の出来事にだけ興味が集中している地表付近の可視領域を、 氷らして冬眠させ、その内部で静かに燃える無機物のエネルギーに耳を傾け、意識を持っていこうとするものです。 それは自然への強引な感情の代弁ともいえるでしょう。鴻池のまなざしの先にある惑星。その惑星は一度雪に覆われ、 しばらくして生きものの気配が消えます。そして真に世界の静寂が訪れる時、無常にもその時、 初めて私たちはまなざしの先にある未知という領域の声に耳を傾けることができるのではないでしょうか。