倉重 迅 「His Shadow Enwraps Me」(TOKYO)
2007年04月25日(水) - 05月26日(土)
ミヅマ・アクションにて倉重迅の個展を開催いたします。2年前の日本での初個展以降、2005年のトリノトリエンナーレ ”The Pantaguruel Syndrome”(イタリア)、2006年 ”Rapt! 20 Contemporary Artists from Japan”(オーストラリア)、そして現在森美術館で ”笑い展 現代アートにみるおかしみの事情” に参加するなど、国内外で活躍の場を広げています。今回の展覧会は日本で制作した新作も含めすべて国内未発表の作品によって構成されます。
どの作品も極めて普通の日常生活の中で「見たもの、感じたもの」から着想を得ている倉重は、自分の作品制作について「常にその瞬間の自分の興味に忠実に作り上げることがベースになっている」と語ります。偶然目にした小学生の習字、飛行機からの地上の風景、吊り広告の見出し等とりとめのない日常の事柄が作品として昇華することにより、観客個人の経験や感覚と重なり合って伝えられます。そこには倉重ならではの視点や価値観、切り口が存在し、見るものに身近に溢れているユーモアや偶然性、ふと立ち止まって思考する大切さを気づかせてくれます。
また決まった表現方法に固執することなく、その時々のテーマにふさわしいメディアを選択し制作するため、作品を並べてみると膨大な情報社会の中で翻弄されながら行き続けている現代人の姿が垣間見えます。
展覧会タイトルにもなっている “His Shadow Enwraps Me” は倉重には珍しく自分のナイーヴな側面に焦点を当てたシンプルなビデオ作品、総勢50人にも及ぶ超能力者の協力を得て制作したインスタレーション、さらには壮大なテーマをモチーフとした自身初、そして最初で最後(?)のオイルペインティング、などバラエティに富む作品は観客の様々な感覚を刺激します。
表現がその時々の興味に大きく振れることが人間としてごく当たり前だからこそ生まれる、作家のモノ作りに対する純粋な姿勢と良い意味での心の揺らめきをお楽しみいただきたく思います。
ギャラリー空間で展示される一見無秩序な作品群は様々な方向に解釈を与え、また見るものの私的な世界の中で増幅し、私たちの生活にささやかな変化を与えてくれることでしょう。