2011年3月30日より中目黒、ミヅマ・アクションにて山田郁予の初個展「絶対、一生、金輪際」を開催する運びとなりました。山田郁予は1983年生まれ、2008年に武蔵野美術大学油絵学科の大学院を卒業し、翌年高橋コレクションにて個展「いいわけ」を開催。
山田はトレーシングペーパーにオイルパステルで人物を描きつけ、強烈な印象を残す絵画を制作します。今展ではそれに加え、初制作となる自作自演の映像作品、また絵画から溢れ出したような言葉を使った作品を併せて発表致します。
山田は「絵は言葉に出来ない部分を表現しているため、うまく説明できない」と語ります。確かに彼女の作品の魅力について正確に説明することは困難ですが、そこには鋭敏な画家としての才能があり、トレーシングペーパーやオイルパステルなどの素材は彼女の本能に導かれるように形や色を変化させていきます。
しかし、そんな繊細な絵画を粗雑なほど無造作に展示する様はまるで、激しさと儚さが混在した作家の内面のようです。発表をしながら「誰にも見られたくない」という矛盾を持つ山田は、外界との関わりを拒否しており、自分の殻の中に抱え込んだ強い葛藤をアートとして表出させます。このような動機はごく個人的なようですが、彼女の背後には引きこもりや無縁という言葉が蔓延している日本の現代社会があります。山田の作品が私たちに強い印象を与えるのは、正直なまでに露呈されている弱さや危うさが先進国に潜む負の部分の象徴のようだからかもしれません。
約一時間の映像作品「一歩でも前に死ね」は、作家のアトリエで本人ただひとりの手により制作されました。殺伐としたタイトルに反し、アイドルのプロモーションビデオのような無害な映像が刻々と続く様に強烈な違和感を受けます。始終笑顔を見せながら人との交わりが皆無なこの映像は、アイドルのそれと異なり大量消費社会への拒絶と批判が内包されています。作品と自分を好きになって欲しいけれど本当は見ないで欲しいという矛盾は、絵画はもちろん映像や言葉の作品すべてに通底しています。