刈谷博展「ひとつの/そして/無数に遍在する/それ It Is All About The One Piece, And Millions of Others」(TOKYO)
2018年01月13日(土) - 02月10日(土)
2018年1月13日(土)より、刈谷博展「ひとつの/そして/無数に遍在する/それ」を開催いたします。
1948年生まれの刈谷博は、77年の渡米以降、ニューヨークを拠点に活動している作家です。
ニューヨークMoMA PS1でのグループ展への参加や、ペンシルバニア大学付属現代美術館(ICA)での個展、水戸芸術館で開催された蔡國強、柳幸典、田甫律子との4人展「開放系」など、80~90年代にかけて国内外で活躍していた刈谷ですが、2000年以降は作品の発表を控え、スタジオに籠り毎日制作を続けてきました。
ミヅマアートギャラリーでは、ディレクター三潴末雄のキュレーションにより93年*から97年まで個展を毎年開催しておりましたが、本展はそれ以来、21年ぶりの個展となります。
刈谷は、長年をかけて「経」をテーマに作品を制作しています。
一日一握りの種子(豆粒)に「the now is」いう3つの言葉を書き込んでいくという今回の作品「種子経」は、1984年から制作が開始され、途中で何度か中断しながらも続けられてきました。その量は現在までに凡そ25年分になると言います。
彼独自の経である「the now is」という言葉について刈谷は、
「the now is」とはbe here nowではない。時空間的でのここ/あそこ/これ/あれと いった限定
のそれではない。では何か?という問いのルーツという。
朝、目がさめると云うことが「それ」なのだ、生を「また」「繰り返し」「学べ」なの「である」。
その繰り返しが写経すると云うことなのだろう。
私には「その現在なり」を「だが、しかし、そうではない」を繰り返すお経が 「the now is」
を「楽しめよ」という音波として伝わる。
目を覚まし、生き始めたらその波動を楽しめや、と。
刈谷の写経は、刹那としての「今」を確認する作業ではなく、「今」とは「在」ること、輪廻転生がその内で続いていることを体現しています。
祈りそのものといえる彼の作品は、明日何が起こるかわからない世界で生きる私たちに、切実さを持って響くのではないでしょうか。刈谷にとって祈りとは、「無数に偏在することごとくの、そしてひとつの、宇宙の均衡」だと言います。
21年ぶりに私たちの元に帰還した刈谷の、内なる宇宙をぜひご高覧賜れましたら幸いです。
*93年開催の個展はミヅマアートギャラリーの前身であるSpark Gallery Ⅱでの展示。