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宇佐美雅浩 展 「Manda-la in Cyprus」(TOKYO)

2018年02月21日(水) - 03月24日(土)

2018年2月21日(水)より、宇佐美雅浩 展「Manda-la in Cyprus」を開催いたします。


 


2015年に弊廊で開催した初個展では、20年間未発表だった「Manda-la」シリーズを展示し、大きな反響を呼んだ宇佐美雅浩。仏教絵画の「曼荼羅」の如く中心人物を中央に配し、その人物の世界観を表現する作品を制作してきました。1枚の写真を撮るために、撮影場所に何度も赴き、現地の人々とリサーチや対話を繰り返しながらする制作スタイルは、東日本大震災の被害にあった福島や気仙沼、被曝地の広島などを舞台に日本が抱える問題や歴史、社会の有様を浮かび上がらせてきました。


 


宇佐美は昨年、キプロスで開催された「パフォス2017」*の公式イベントとして個展の依頼を受けたことを機に、1年間をかけて「Manda-la in Cyprus」の制作に挑みました。


地中海の人気ビーチリゾートでありながら、「世界最後の分断首都」といわれる首都ニコシアを有する島国キプロス。紀元前から幾度となく周辺の国々によって支配され、翻弄されてきた歴史を持ちます。


1974年のキプロス紛争では、ギリシャ系キプロス人は南へ、トルコ系キプロス人は北への移住を迫られ、人口の三分の一が家を失いました。現在は停戦状態にありますが、南北は今も緩衝地帯(グリーンライン)によって分断されています。


今回の宇佐美の制作は、トルコ語とギリシャ語を主言語とする現地の人たちとの片言の対話、民族性の違い、そして政治的な問題と、想像以上に難航を極めました。


「ギリシャ正教徒であるギリシャ系キプロス人と、イスラム教徒であるトルコ系キプロス人。両地域の人々が分断されている現状と過去の歴史を乗り越え未来を作ろうと模索している姿は、現在の世界の状況や、西側諸国とイスラム諸国の問題ともリンクする。この小さなキプロスから何か少しでも世界中の人々が共感し、考えてもらえるきっかけとなる作品を作れないかと思った」という宇佐美。何度もプランを軌道修正しながら、両地域の人々との「協働」によってようやく作品は完成しました。


誰もが平和を願いながら、世界中では今もボーダーを越えることができず対立し、戦争や貧困は続いています。この矛盾を掬い取り、世界の現状を刻んだ今回の作品は、宇佐美の今後の進展を期待させます。ぜひ本展にてご高覧いただけましたら幸いです。


 


*毎年EU加盟国の中から「欧州文化首都」を定め、1年を通して芸術や文化に関するイベントを開催。2017年はキプロスの都市パフォスが選定された。


 


〈関連イベント〉


キプロス報告


2月24日(土)16:00-18:00(予定)


インタビュアー:菊田樹子(インディペンデント・キュレーター)