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会田誠展「愛国が止まらない」(TOKYO)

2021年07月07日(水) - 08月28日(土)

※ 夏季休廊:8月8日(日)ー16日(月)


 


※ 新型コロナウィルス感染拡大防止のため、本展は1時間ごとに定員12名の枠を設けたアポイント制での開廊とさせていただきます。


ただし、定員に達していない時間帯は予約なしでの当日鑑賞が受付可能です。


ご来廊の際には、オンラインによる事前予約をお願いいたします。(予約開始は展覧会の数日前を予定しております。)



https://airrsv.net/mizumaartgallery/calendar


状況に応じて開廊方法などに変更がある場合には、随時ホームページ等で情報を更新いたします。皆様にはご不便おかけしますが、ご理解、ご協力をお願いいたします。


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ミヅマアートギャラリーでは7月7日(水)より会田誠展「愛国が止まらない」を開催いたします。


本展は当初、昨年夏の東京オリンピックの開催に合わせ企画されていましたが、オリンピックの延期に伴って本年に持ち越されました。ギャラリーでは5年ぶりの個展となります。

本展では、それぞれ制作動機は異なりつつ、「食」というベーシックな欲望を契機にした点では共通する、自国・日本への断ちがたい会田の思いを題材とした3作品が一同に会します。


 


ギャラリーのスペースを大きく占有するのは「MONUMENT FOR NOTHING」シリーズの5作目、《MONUMENT FOR NOTHING V〜にほんのまつり〜》です。

2019年1月、会田は兵庫県立美術館で開催された「Oh!マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー&ピーポー」展に参加しました。「日本における英雄と庶民の関係性」といった一風変わったお題を担当学芸員の小林公氏から与えられ、それに応答して制作されたのが本作です。(なお、図録に寄せた小林氏の論考は美術連絡協議会による優秀論文賞を受賞しました。)今回は東京での初お披露目となります。

兵站の軽視により飢餓に直面することが多かった旧日本軍の兵士がモチーフになっています。素材や技法は青森のねぶたを参考にしました。


 


巨大な日本兵の亡霊が上から睥睨するギャラリーの壁には、新作絵画シリーズ《梅干し》が並びます。

会田は高橋由一の《豆腐》(1877年)を「日本で最初にして最良の油絵」と公言しており、《梅干し》はそれを念頭に置いて制作された、油絵具による写生画です。美術家としての会田個人は、今このタイミングで、日本の近代の始まりにもう一度真摯に遡行してみる必要性を感じました。日本人にのみ偏愛され、外国人に最も理解されにくい日本食の代表でもある梅干しに、会田はアーティストとしての自分も含めた、諸々のものを託したのでしょう。

またこのサイズの小さい絵画シリーズは、前回(2016年)の個展で発表された「ランチボックス・ペインティング」シリーズと対になるものとも言えます。抽象と具象という両極にありつつ、絵画の純粋な実験性において共通しているからです。


 


上記2作は昨年の時点で展示プランに入っていましたが、会期が1年延期されたことでもう1作追加になりました。


「漬物」を題材にしたコンセプチュアルな新作です。国際的な政治性を笑いで表現している点では《The video of a man calling himself Japan’s Prime Minister making a speech at an international assembly(国際会議で演説をする日本の総理大臣と名乗る男のビデオ)》などの延長線上にある作品でもあります。

中国、日本、韓国、そして北朝鮮の4カ国の作家が参加するグループ展が、昨年韓国・済州島で企画されていました。北東アジアの平和のためにアートがどのような役割を果たすのかをテーマに掲げた展覧会で、会田は当初、極めて政治的なパフォーマンス作品での参加を打診されていましたが、コロナ禍で渡航が叶わなくなり、代案として本作を制作しました。しかしコロナの終息の見通しがつかず、展覧会は再び延期となったため、本展でこの作品を発表することにいたしました。


 


会田誠はデビュー以来ほぼ一貫して、日本文化や日本社会をテーマにしてきました。もちろん批評的な態度によってではありますが、ここまでこのテーマにこだわり続けている現代美術家は、他にはそう見当たりません。最近一部のネットでは「反日アーティスト」などとレッテルを貼られることもありますが、実際は会田こそが「愛国者」なのではないでしょうか。はたして「愛国が止まらない」というタイトルは会田の真情なのか、それともアイロニーなのか──それを確かめるためにも、ぜひ本展にご来廊いただければ幸いです。