会田誠・曽根裕展「-・-・ ・- -・ ・-・・ ・-- -・・- ・・-- -・・ ・・ --- ・---- ・・--- ----- ---・・〜侵攻の記憶」(TOKYO)
2022年09月21日(水) - 10月15日(土)
ミヅマアートギャラリーでは9月21日(水)より会田誠・曽根裕展「-・-・ ・- -・ ・-・・ ・-- -・・- ・・-- -・・ ・・ --- ・---- ・・--- ----- ---・・〜侵攻の記憶」を開催いたします。
本展はギャラリーを代表する所属作家・会田誠と、1965年生まれの同じ歳でもあり、個人的に長い付き合いがありながら、今回が初めての共演となる曽根裕による二人展です。
曽根裕は、現在ベルギー(アントワープ)を拠点に、中国(福建省崇武)、メキシコ(ガラダハラ、ミチョワカン)、日本(香川県高松市)にスタジオを構え活動しています。大理石を使った大型の彫刻作品や、彫刻を用いたパフォーマンス、映像やインスタレーション、ドローイングなど多様な表現を展開してきました。
曽根は、コロナ禍の移動制限のなか縁あって居を構えた秋田において、親交のあるアーティストやキュレーターと共に、本年10月より来年3月にかけて「SUMMER 2022」というプロジェクトを始動します。
1967年の夏、アメリカ・サンフランシスコを中心に巻き起こったムーブメントがありました。当時ベトナム戦争の渦中にあり、閉塞感の漂う社会の中で数々の矛盾に気づいた若者たちは、消費主義的な価値観を否定し、非暴力かつ精神的、瞑想的な方法で世界を変えることを信じました。反戦や兵役免除、自由恋愛などを訴え、集会やドラッグ、音楽、絵や詩などさまざまな表現を通して繰り広げられたこの一連の現象は「Summer of Love」と呼ばれ、カウンターカルチャーの形成に大きく貢献しました。人類が人間的にいかに成長できるかを問う壮大な社会実験であったとも言われています。
それから55年後の2022年、今回始動するプロジェクト「SUMMER 2022」も、未だ終息の見えない新型コロナウイルス感染症の世界的流行や、ロシアによるウクライナへの侵攻などで社会不安が高まるなか、直接的、間接的に暴力が氾濫する社会環境に対して、声をあげる必要性を感じたことに始まりました。
国籍や民族、ジェンダー、世代、文化の相違、さまざまな信条を越えて繋がりを持とうとする表現者同士のゆるやかな、しかし反戦、非暴力において確かな繋がりを、作品の展示だけでなく、文章や写真などの印刷物、参加型対話の機会を作り、広く市民の方々にも広げていくことを目指しています。
「SUMMER 2022」に先駆けて開催される本展のメインタイトルは、モールス信号表記で「ニイタカヤマノボレ1208」、真珠湾攻撃を命じた暗号電文です。
新高山(玉山)は標高3,952メートルの台湾でいちばん高い山です。台湾は当時日本統治下にあり、玉山は富士山を超える標高だったことから、「新(しい)高(い)山」と名付けられました。「ニイタカヤマノボレ1208」はその頂を目指し天下を取るという意味で、「12月8日に真珠湾を攻撃せよ」と襲撃の開始を命じる暗号として使われました。
本展で曽根が展示するのは、実際に玉山の雪で作った雪玉をセラミックで象った《Snowballs》(2017)と、玉山の情景を描いた新作の絵画です。
会田誠は、自身の代表作でもある《紐育空爆之図(戦争画RETURNS)》(1996)を展示作品に選びました。
形のない記憶を彫刻にすること、現実を超越してしまうような人間の想像力の豊かさ、ふたりの作品は時代や世相に反応しながら、芸術の根源や義務、その発展の可能性を我々に提示します。
非暴力や反戦を唱える前に、まずは自分たちの加害の歴史にも目を向けるべきだという作家の誠実な態度は、
集団の侵攻の記憶を今一度認識する貴重な機会となるでしょう。
会期中には、作家自身だけではなく、さまざまな人々から寄せられたテキストやコメントを元に、ガリ版印刷で新聞を作成し、「SUMMER 2022」へと繋いでいきます。
3週間という短い会期ではありますが、たくさんの方々にご高覧いただけましたら幸いです。
協力: 高橋龍太郎コレクション
Tommy Simoens, Antwerp
Franz, Taipei
Yutaka Sone Studio