棚田康司展「はなれていく、ここから」
2022年10月26日(水) - 11月26日(土)
ミヅマアートギャラリーでは10月26日(水)より棚田康司展「はなれていく、ここから」を開催いたします。
パンデミックで世界の動きが停滞し、誰もが乗り越えなければならない出来事と直面しながら暮らす日々の中で、棚田は手を休めることなく辛抱強く制作と向き合う時間を過ごしてきました。
国立新美術館で開催された「古典×現代 2020」展においては、円空仏と棚田の作品が同じ展示空間で相対し、時空を超えた作品同士の出会いは、脈々と受け継がれる木彫の伝承と、未来へ繋がる豊潤な可能性を提示しました。
本年11月には、隈研吾氏が設計を手がけた兵庫県伊丹市の新庁舎に、三沢厚彦氏の作品と共に棚田の作品3体が恒久設置されることとなりました。建て替えのために伐採された樟が利活用され、作品へと姿を変えて市庁舎へ戻ります。
また、先日発表された第30回平櫛田中賞の受賞理由においては、「木彫における伝統性と現代性を高いレベルで融合させている」点が挙げられ、これまでの棚田の活動が評価される形となりました。
本展では、コロナ禍の最中に制作された《宙の像》と《2020年 全裸の真理》が対峙します。1本の大きな樟をふたつに割って制作された2体の女性像は、一方は槍の先の如く尖って宙へ向かい、一方は真実を映すような深い眼差しを持ち、はるか彼方の地平を俯瞰しているかのようです。
「はなれていく、ここから」というタイトルが予感させるように、世界は分断と結合を繰り返して変質が進んでいます。それは、国家や社会、思想などにおいて、今まさに私たちが目にしている変化はもちろんのこと、当たり前のようにあった存在が欠けていくこと、自らの意思を持って離れていくことなど、誰もが日常で経験しうる現実でもあります。
分断された世界のどちらかに立たされる、その選択を迫られて葛藤するとき、棚田の作品はそのどちらでもない曖昧な領域に立ち現れ、こんな世界もあるのだと、その存在で示してくれるのかもしれません。
また、本展では新作「反逆のポートレート」シリーズを発表いたします。ミサイルやロケットの噴煙と共に、キャロリー・シュニーマンやハンナ・ウィルケなどの女性アーティストの肖像が描かれたキャンバス作品です。これまでの棚田の彫刻は、時事問題との直接的な関わりとはある程度の距離を置いて制作されてきましたが、今回描かれた絵には、今をどう生きていて何を見ているのか、という棚田自身の別の視座が現れています。自らの身体を使って表現をし、アートの開放を示したフェミニスト・アーティストの肖像を描くことは、近年成人女性の裸婦像を多く創出している棚田にとって、ジェンダーやセクシュアリティなど、現代の人間が抱える本質的な問題に目を向けるだけではなく、人体のヌードをいかに肯定させていくかということへの彫刻を主軸としたアプローチでもあるのです。
ギャラリーでは1999年以降10回目の個展となる本展は、より広い視点を持って変容し深化していく棚田康司の作品世界を存分に堪能できる内容となっております。この機会にぜひご高覧ください。
今回の展覧会を3Dウォークスルーでもお楽しみいただけます。
下記リンク先よりご覧ください。
https://my.matterport.com/show/?m=S5nqqJKdh1W