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赤松音呂「どこもかしこもひとつじゃない」(シンガポール)

2024年05月24日(金) - 06月23日(日)

赤松音呂の個展「どこもかしこもひとつじゃない」が5月24日(金)からシンガポールのMizuma Galleryで開催されます。本展は赤松の初めてのシンガポールでの個展となります。


 


<作家コメント>


 


「どこもかしこもひとつじゃない」


 


小さい子供にとって、息を吹きかけると飛んでいくタンポポの綿毛や蟻の巣に食べ物を運ぶ行列は興味の対象だ。成長するにしたがって彼らは友達を作るようになる。学校に行くようになると、家の中だけだった社会がその何十倍にも広がる。すべての子供は彼らが見聞きしたものから構築したそれぞれの小世界を持っている。大人になっても住んでいる国や地域によって自然環境は違うし、社会構造も違っているので、それらの捉え方次第で人の数だけ小世界があると言える。これは人間だけではなくて動物にも当てはまる。子供が見つめた蟻は独特の感覚器官をもち社会を形成しているので、蟻が見ている独立した小世界がある。そのように考えれば、唯一の宇宙がすべてを含んでいると考えるよりも、小世界が隣り合って無限に広がっていると考えられる。


フランスの哲学者ジル・ドゥルーズは著書の中で音のリズムが作る境界について書いている。幼子が暗い夜道を歩いて家に帰ろうとしているが怖くてしょうがない、そこで歌を口ずさんでみたらそのリズムが幼子の周りに結界を作り、周囲の恐ろしい世界から安心できる世界が現れて、子供は怖くなくなって帰ることができたというのである。これは彼の思想を表すための逸話だが、日本文化には日常と特別な世界の狭間に設置される結界が数多くあって、神社の鳥居などがその例だ。音のリズムで結界の働きをする、茶室の前に置かれる「水琴窟」という江戸時代のインスタレーションがある。茶の世界に入る前に、参加者は地中の瓶の中に滴り落ちる水滴の音を聴いて特別な場所に入る気づきを与えられる。この展覧会にも小世界を行き来する時の気づきをもたらす作品がある。私はこの隣り合った小世界の境界に興味を持ち、作品をこの境界面上に配置してみた。


 


赤松音呂



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<会期> 2024年5月24日(金)ー6月23日(日)


<開廊時間> 火ー土 11:00-19:00 / 日 11:00-18:00


<休廊日> 月曜


<会場> Mizuma Gallery(22 Lock Road #01-34, Gillman Barracks, Singapore 108939)


ヴェルニサージュ:5月24日(金)16:00 – 20:00 (作家在廊)

アーティストトーク:5月24日(金)18:00 – 19:00